まるさんという方からメールいただき、「遅発性ジスキネジア」を克服したとの報告を受けました。まるさんのブログに詳細が記されていますので紹介します。
向精神薬 断薬の離脱症状・遅発性ジスキネジアを完全克服
ひきこもり中年主婦 まるの闘い
まず、まるさんの精神科受診歴ですが、初診は今から14年前の2005年5月。診断名は「神経症」でした。処方された薬は、抗うつ薬(SNRI)と眠剤。
ここからまるさんの向精神薬の服用が始まり、2017年まで、つまり12年間の服用です。
服用はしましたが、症状はその後も安定せず、2〜3年後には診断が「双極性障害」に変わりました。そして、この病名になってから、向精神薬の種類がぐっと増えたと言います。リチウム、抗てんかん薬、抗精神病薬等々。
そうした薬を飲み続けて数年後の2011年6月頃に、遅発性のジスキネジア(食いしばり等)の症状が出始め、まるさんは歯科医に相談をしています。(食いしばりだけでなく、薬剤性パーキンソニズム、レストレスレッグス症候群の症状が出ていました)。
しかし、対処法なく、3年後の2014年9月頃、食いしばりはマウスピースを作らなければならないほどに悪化しました。そして、ついに顎が痛くて口を開けなくなり(顎関節症)ました。
しかし、じつは、こうした経過については、長年の向精神薬服用の副作用による認知機能の低下で、まるさん自身、あまり記憶に残っておらず、病院に問い合わせて初めてわかったことだと言います。
認知機能の低下は長期間にわたり、例えば、簡単な計算ができなかったり、物忘れが激しくて日常生活にも支障をきたすほどでした。それでも、まるさんは自分の受けている精神医療に疑問を抱くことはありませんでした。症状の出現は原疾患の悪化と、医師からも言われて、自分でもそうだと思って治療を受け続けたのです。
しかし、2016年末〜2017年1月頃に、突然、言葉が出てこなくなるという症状に見舞われ、恐怖にかられます。この症状を経験したことでやっと薬の副作用を疑うことになりました。そこで、医師には黙って減薬を開始します。
この時期に飲んでいた向精神薬はデパケン、ベンゾ系睡眠薬、抗てんかん薬でした。
2017年1月~
デパケンにはパーキンソニズムという副作用があることを知り、まるさんはこれを早めに減断薬しました。
プロチゾラム錠0.25mg(ベンゾ)
処方は就寝前 1錠と、眠れない時の頓服 1錠だったので、まず頓服で飲むのをやめ、その後、少しずつの減薬を開始。
しかし、ここから不眠との戦いが始まります。
2017年3月頃
プロチゾラムを半分に割ったものを、1日おきに飲むという方法で減薬。そして、3月末に一気に断薬しました。
このあたりから、さらにさまざまな離脱症状が始まり、かなりひどい不眠状態に陥りました。また、さまざまな身体症状、精神症状に苦しむようになりました。
2017年4月
長年の担当医が開業したため、担当医師がT医師に変わったのを機に、プロチゾラムを断薬したことを告げたところ、ロゼレムを切替処方。また、ロラゼパム(ベンゾ)を頓服として服用。
しかし、離脱症状は変わることなく、辛い日々が続きます。
ロゼレムではほとんど寝ることができませんでした。まるさんは絶望的な気持ちになり、断薬をあきらめようと思ったこともたびたび。かなり不安定な状態だったと言います。
しかし、この頃?(うる覚え)、「ベンゾに関する注意喚起」について知り、初めて「ベンゾの離脱症状」という言葉を知ったそうです。しかし、すでにレンドルミンを断薬しており、後の祭り状態に。たいへんな離脱症状に見舞われることになりました。
2017年7月。担当医師が現在のS医師に変わる。
ラミクタールとロゼレムは継続して服用していました。
S医師に今まで服用してきた薬の副作用がひどいことを訴えると、「今飲んでる薬、一旦全部やめてみますか!」と言われ、まるさんは愕然とします。一気に断薬したらどんなことになるか。医師から見放されたような気持ちになり、かなり動揺したと言います。
この頃もまだロラゼパムの頓服はもらっていましたが、まるさんとしては意地でも飲みたくなかった。(3度ほど飲んだそうです)。そして、2017年8月〜10月頃?(かなり曖昧な記憶だそうですが)、このロラゼパムを完全に断薬しました。
これでベンゾ系断薬の完了です。しかし、副作用や離脱症状には相変わらず。
2018年3月頃から栄養療法を開始します。そして、以下2剤を断薬。
ラミクタール(抗てんかん薬)。おそらく2週間程度かけて減断薬。
また、向精神薬ではありませんが、クレストール。これはスタチン系 高コレステロール薬で、アルツハイマーのリスクが指摘されている悪名高い薬です。まるさんはこれも服用していましたが、ナイアシンでコレステロールを下げられることを知り、コレステロール対策はナイアシンを飲むことにして、この薬を断薬。
これで、服用していた薬すべての断薬が完了です。
減断薬と並行して行った栄養療法ですが、まるさんには向精神薬の副作用や離脱症状に対して「驚異的な回復」をもたらしてくれたと言います。
そして、遅発性ジスキネジアもさまざまなサプリメントを飲むことで、完全に克服できました。遅発性ジスキネジア歴8年。完治の難しい症状ですが、まるさんは現在、すっかりこの症状から解放されていると言います。
その詳細についてはまるさんのブログを参照してください。
非常によく勉強されています。また、自身の体をよく観察し、自身の体と相談しながら、さまざまな仮説を立て、サプリメントを選択し、回復をはかっていく様子は、多くの方に勇気を与えてくれるものと思います。(ただし、まるさんも書かれていますが、これはあくまでもまるさんにとって効果があったということです。万人に共通のものではありません)。
遅発性ジスキネジアの治験について
遅発性ジスキネジアについては現在、以下のような治験が行われています。治験で使用される薬は「小胞モノアミントランスポーター2(「VMAT2」)阻害剤MT-5199(一般名:Valbenazine)」です。
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/docs/MT-5199.pdf
https://rctportal.niph.go.jp/detail/jp?trial_id=JapicCTI-184016
「バルベナジン」はドーパミンの放出に影響を与える作用のある薬です。つまり、向精神薬によってドーパミンに影響が与えられたため、その影響に関連付けてドーパミンにさらなる影響を与える薬・・・脳に作用する薬によって出てきた副作用に対して、同じく脳に作用する薬で対処しようとする、これは、精神医療の常套手段ともいえるやり方です。
バルベナジンはすでにアメリカのFDAでは承認されており、1年間の使用結果が報告されていますが、https://www.vijonap.com/single-post/valbenazine-one-year
これだけでまだはなんともいえないでしょう。
遅発性ジスキネジアは薬剤性=医原性です。としたら、そもそもの処方をもっと慎重にすべきで、こうした副作用を出さないようにすることが、医療としてまず取り組むべきことのはずです。