1116日の日本経済新聞にたいへん興味深い記事が出ました。

 以下部分的に紹介します。

 

精神疾患薬 中国で強化 

 大日本住友 情報担当者3倍に

 

 大日本住友製薬は2022年までに、中国で精神疾患の治療薬のMR(医薬情報担当者)を現在の30人から100人まで3倍強に増やす。同社は18年度をめどに、米国で年間1700億円以上を売り上げる主力の抗精神病薬を中国で発売する予定で、売り込み体制を併せて強化する。

 中国では従来、精神疾患への認知度が日本や米国より低く、治療薬の市場規模は年1000億円程度にとどまる。ただ今後は患者が増え、需要は伸びるとみられている。

(中略)

 17年度には統合失調症治療薬「ロナセン」、18年度には抗精神病薬「ラツーダ」といった大型の精神疾患の治療薬を中国に投入する予定。医療機関や医師向けの情報提供体制の強化が必要と判断し、MRを新規採用や配置転換などで22年までに3倍超まで増員する方針を決めた。

 

引用以上

 

 製薬会社の新たな市場獲得、ということでしょうね。

日本もそうやって、1999年、SSRIが導入され、以降あっという間に精神薬が日本中を席巻しました。13億7000万人という人口を有する中国の市場規模は莫大ですから、今後製薬会社の生き残りをかけた熾烈な競争が一層激しくなるのではないでしょうか。地球上に精神薬のない土地がなくなる日も近いのでしょう。

 

 それにしても、「今後は患者が増え、需要は伸びるとみられている。」という日本語にはとても深い意味があるように感じました。

それはたとえば「薬が導入されることによって患者が増える」と同義です。抗精神病薬を手にすれば、統合失調症の患者が増える。まさにSSRIを手にした日本に「うつ病患者」が溢れたのと同じ現象を、この記事は図らずも予想しています。

 

 日本に抗うつ薬の導入が決まったのも、中国に抗精神病薬の導入を決めたのも、国民性を重視してのことでしょう。日本人特有の「悲しみ」を「うつ病」として抗うつ薬の売り込みははかられましたが、中国人に「うつ病」はあまり似合いません。中国に詳しい人の話では、そんなことではあの大国で生き残れない・・・としたら、戦略としてはアフリカ・ザンジバルで行われたのと同じように統合失調症という病気を流行させることなのでしょう。

(心の病はいかに輸出されたか 『クレイジー・ライク・アメリカ』という本に詳しく書いてあります)