3月17日に判決を迎えたこの裁判。医師の説明責任義務違反があったことを認めました。対談では、ベンゾジアゼピンの問題、日本の医療者の問題、日本の司法制度の問題など多義にわたり、当事者、担当弁護士、フリーライターの嶋田和子氏が対談します。また、医療過誤を隠蔽しようとする医師の意見書も具体的に分析します。

 申込先 「医療を考える会」中村 kakosan816@yahoo.co.jp

 

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 前のエントリで、名古屋のベンゾ訴訟において「ほぼ敗訴」と書きましたが、詳細が分かるにつれて、「ほぼ敗訴」とは言い切れないものがあることもわかってきました。

新聞報道はそうした視点からの記事です。

 てんかん薬後遺症、病院側に賠償命令 名古屋地裁「説明不十分」

 記事の見出しはこうなっています。

こうした受け止め方をされること自体、これがいかに珍しい判決かということの証拠でもあります。

 ベンゾの処方において、「説明義務違反があった」として117万円の賠償が支払われる……マスコミ的にはこちらのほうがニュースバリューがあったということです。

(もちろん、原告としてはベンゾそのものへの言及がないこと、めまい症に抗てんかん薬を使われたことに対して、「医学的に相応の合理性があった」という判断は受け入れがたいことであり、この部分に焦点を当てれば「敗訴」の感は否めません。)

 が、それでも、この裁判を扱った中日新聞と日本経済新聞の両社ともに、病院側の「説明義務違反」を重く受け止めています。

 これは今後の裁判にとって一つの風穴になるかもしれません。

 

中日新聞3月18日 http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017031890003754.html

てんかん薬後遺症、病院側に賠償命令 名古屋地裁「説明不十分」

 めまいの治療に依存性の高いてんかん治療薬を使用され、重い後遺症に苦しんだなどとして、名古屋市緑区の会社員〇〇さん(59)が、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)に約1億6千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は17日、副作用のリスクなどの「説明義務違反があった」として約117万円を支払うよう命じた。

 判決理由で朝日貴浩裁判長は「投薬の有効性や長期服用による依存の可能性を十分に説明したとはいえない」と指摘。てんかん治療薬の投与については「医学的に相応の合理性があった」として、センター側の注意義務違反を認めなかった。

 判決によると、〇〇さんは2004年、めまいを訴え同センターを受診。てんかん治療薬の服用を1年以上続けたが、めまいは完全にはなくならず、別の病院で薬物依存症と診断された。

 〇〇さんは「投与についてセンターの責任を認めなかった不当な判決」と述べ、控訴する方針。同センターは「主張が一部認められず遺憾。判決内容を検討し、今後の方針を決めたい」とコメントした。

 

日本経済新聞(紙媒体)

 国循に117万円賠償命令 めまい治療で睡眠障害

 めまいの症状がでた名古屋市の男性(59)が、この症状の治療法として確立していない抗てんかん薬の投与療法を受け睡眠障害などを負ったとして、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)に約1億6千万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は17日、約117万円の支払いを命じた。

 朝日貴浩裁判長は、この薬の投与自体は「医師の裁量で行うことが許容される」とする一方、確立した治療法ではない点や精神に及ぼす副作用のリスクなど説明が十分でなく「説明義務違反があった」と判断した。

 

 4月2日の講演会では、こうしたことを踏まえて、今後の裁判の展望も考えてみたいと思います。

 つまり、ベンゾ処方も「説明義務違反」で争える可能性があるということです。