服薬中の妊娠については、以前、ブログでも紹介したことがあります。妊娠がわかり、突然の断薬により激しい離脱症状が現れて、耐えきれずに中絶された方もいました。メールで伝えていただいた中には、服薬しながら妊娠出産をしたが、障害をもって生まれたという報告を受けたこともあります。あるいは、パキシル服薬中妊娠し、出生前診断で障害の可能性を指摘された結果、妊娠継続を断念した人もいます。
そして、今日は「新生児薬物離脱症候群」について考えます。
向精神薬等を飲みながら妊娠出産した結果、生まれた赤ちゃんが、母体から分離されることで、離脱症状を起こすというものです。
厚生労働省も以下のようなページを作り、患者に呼びかけています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j18.pdf
新生児薬物離脱症候群とは?
妊娠中お産が近づいてから、けいれんを抑える薬、不安感などの精神的な症状を和らげる薬を使用していたお母さんから生まれた赤ちゃんに薬の作用として、「ぐったりしている状態」や「手足をブルブルふるったりする状態」があらわれることがあります。
薬の影響がより強い場合には「けいれん」や、「息をとめる」などの一時的な症状が現れることがあります。こうした赤ちゃんの一時的な変化を新生児薬物離脱症候群と言います。
新生児薬物離脱症候群を発症する可能性のある麻薬以外の主な母体投与薬物および嗜好品等
1.催眠・鎮静剤 1)バルビツール系薬物 バルビタール、フェノバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、 アモバルビタール、アモバルビタールナトリウム、ペントバルビタールカルシウム、 ペントバルビタールナトリウム、チアミラールナトリウム、チオペンタールナトリウム 2)非バルビタール系薬物 フルニトラゼパム、ニトラゼパム、ブロモバレリル尿素 2.抗てんかん薬 フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム 3.抗不安薬 クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、メダゼパム 4.抗精神病薬 クロルプロマジン、ブロムペリドール 5.抗うつ薬 ノルトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミン、フルボキサミン 塩酸パロキセチン水和物、塩酸セルトラリン 6.非麻薬性鎮痛薬 ペンタゾシン 7.気管支拡張薬 テオフィリン 8.嗜好品 アルコール、カフェイン |
新生児薬物離脱症候群の子どもたちには、次のような症状が出ます。
傾眠、筋緊張低下、筋緊張の増加、不安興奮状態、安静時の振せん、興奮時の振せん、易刺激性、けいれん、無呼吸発作、下痢、嘔吐、哺乳不良、多呼吸、多汗、発熱、その他。
こうした新生児薬物離脱症候群の治療は、もちろん、向精神薬の投与です。日本において使用されるのは主に、ジアゼパムとフェノバルビタールです。
それにしても、精神科の閾が低くなっている現在、向精神薬を飲みながらの妊娠出産という事態はかなり増えていると想像できます。だからこそ、厚生労働省もこうした注意喚起を行っているのでしょう。
しかし、現場の産婦人科ではこの事態をどう受け止めているのでしょうか。
「新生児薬物離脱症候群」についてどこまでの知識があり、どう対応すればいいかのマニュアルがどこまで徹底されているのか。
子どもの精神医療を考えたとき、「新生児薬物離脱症候群」は、子どもの人生の始まりという点で、一つ大きなテーマであると感じます。
そこで、「子どもの精神医療を考える会」として、全国の出産件数の多い病院(産婦人科)50件に、アンケート調査を行うことにしました。
質問内容は、
①「新生児薬物離脱症候群」について周知されていると思うか
② 向精神薬を服用している妊婦さんに「新生児薬物離脱症候群」を説明しているか
③「新生児薬物離脱症候群」の子どもが生まれたときの対応について
④「新生児薬物離脱症候群」を見落とされることによって他の疾患(ADHD等)に誤診される可能性について
簡単なアンケートです。ぜひ多くの病院からの回答を期待しています。
もちろん、結果はまたこのブログにてご報告いたします。
また同様の調査を、規模は小さくなりますが、精神科と保健所にも行っています。
あわせて、結果をご報告します。