近頃は体験談としてブログに掲載することはないものの、メールその他でいろいろな話を聞く機会は多々ある。

 そのなかで、やはりどうにもやるせないのは、二十歳前後で精神的な問題を抱え、20年近く精神科を漂流し、少しずつ状態が悪化しているというケースである。

最初はほんのちょっとした不安だった。あるいは強迫的な行為だった。それが薬物治療を行ううちにさまざまな「当初はなかった」症状が出てくるようになり、医師はそれを「病気が悪化した」としてさらなる治療を行う。治療というのは、もちろん「薬」ということだ。

そんな治療を重ねるうちに、また「別の症状」が出てきて、それもまた「薬」で抑え込もうとする。

そんな「治療」を続けるうちに、つけられる病名は「統合失調症」である。

さまざまな抗精神病薬が試される。しかし、統合失調症ではないためかどうかわからないが、とにかく何の効果もない。

となると、今度は病名が「難治性(治療抵抗性)統合失調症」となり、電気ショックかクロザピンの選択を患者家族は迫られる。

電気ショックもクロザピンもれっきとした「治療」の一つだから、何の知識もなければ、藁をもつかみたい家族はどちらかに「賭け」ようとする。一発逆転……があるかないかはわからない。が、「ない」ケースの方が多いのではないだろうか。としたら、あと、患者家族に残された選択肢は何があるというのだろう。

 

 おそらくそもそもの最初からボタンの掛け違いがあった。だから、「治療」を続ければ続けるほど、掛け違った幅も大きくなっていく。

 最初にボタンを掛け違わない精神科医が、いればいいが、多くは「誤診」をしても「誤診」とも気づかない場合が多い。途中で何かに気が付いたとしても、もう後戻りができないほどに、患者は「薬」でやられてしまっている。

 医師が病人を作る。いや、日本の精神医療そのものが「病人」を作るシステムになっているのかもしれない。

しかし、そうとも知らず、当事者家族は、20年間、どこかに「いい病院」「いい医者」がいるのではないかと探し求める。そして、結局行き付く先がこういうものだとしたら、いったい「精神医療」は何のためにあるのだろうと、今更ながら青臭い書生のような疑問がいやがうえにも湧いてくる。

発達障害、広汎性発達障害、アスペルガー、今で言えば自閉症スペクトラムの誤診じゃないか……? 

しかし、現在の症状を見る限りでは、「統合失調症」以外の何ものでもない。もう、薬によっていじられた頭では、何が元々なのか、どこからが薬のせいなのか、見極めることは不可能だ。

 

もう一方の話

 もちろん薬の影響は大きい。薬が症状を作っている部分は、確かにある。

 しかし、それ「だけ」ではないのも事実である。

 環境の問題、親子関係の問題。いい親、悪い親とか、親子でどちらがいいとか悪いとかいうのではなく、その子と親との「相性」もある。同じきょうだいでも(兄弟でも姉妹でも)、両方が「病気」にならないのはそういうことが関係しているからだろう。

 親が対応を少し変えるだけで、子どもの反応がまったく違ってくることがある。激しい行動がある場合(もちろん薬が入っての話である。そういう人の場合、多くは薬が入る前は、とてもじゃないが、今のような暴言暴力など想像もつかないくらいおとなしい子だったという話をよく聞く)、根底には「怒り」があるのだと思う。それが「薬」が入ることによって抑制が外れて、大暴れとなる。これまでこらえてきた分、その出方は激しい。

 何に対する「怒り」なのか。誰に対する「怒り」なのか……わからないが、根っこにはやはり「親子関係」があるのは、人間なら誰しものことだろう。

 怒り、欲求不満、そして不安。

 

 だから、家族の誰かが病気になる(症状が出る)ということは、本来なら家族全体を見直す必要があるのだと思う。しかし、日本には家族療法など、やっているのか? という程度のものしか存在しない。家族関係を見直すことなく、薬の入った当事者が改善することはあまりないと感じている。

そして、家族関係を見直すというのは、もしかしたら親が「折れる」――(言葉が不適切かもしれないが、子どもの立場にまで下りて行って理解するということ)しかない場合が多い。決して悪意のある「親」ではない。ただ、その子との「相性」が悪かっただけなのだ。親が責められるべきではない。が、親が「変化」するしか、当事者はよくなっていかないような気がする。なぜなら当事者は、そこまで「我慢」してきたのかもしれないからだ。

 親が子の減薬を目指しているのだとしたら、これはなおさらだと思う。薬はやめればいいというものではない。そこに至るまでの家庭のこと、親子の関係を見つめ直さなければ、おそらく減薬はうまくいかないだろうし、改善も覚束ないのではないか。

 また、自分のことを自分で決められるくらいの状態の当事者で、親が変わらないのだとしたら、そうした親子関係を自身のなかで昇華(精算)しない限り、やはり本当の意味で回復はないのではないかと思う。

 

お知らせ

 ゆうさんの会   

 子どもが精神科で内服治療し、その後の減薬や離脱症状を考える、親の茶話会です。
相談し合ったり励まし合ったり、他の人と話す事で気がつく事が多々あります。
 
日時  12月2日金曜日  13時〜17時(出入り自由)
場所  JR新小岩近く  (メールを頂いた方に直接ご連絡します)

参加費  500円程度

 
下記アドレスに簡単な自己紹介を添えてメールして下さい。2、3日中に折り返しご連絡致します。
pieta2kidsあっとgmail.com
(あっとを@に変換して下さい。)