今日は、短い記事を一つ。

 「処方薬依存」に陥るきっかけとなることの多い薬といえば、まずデパスが挙げられる。

 デパス(エチゾラム)は厳密にはベンゾジアゼピン系ではなく、チエノジアゼピン系という種類に属す抗不安薬だ。しかも、「向精神薬」に指定されていなかった。

「いなかった」と過去形で書くのは、このデパスが今年の9月にも「向精神薬」に指定される予定となったからである(厚生労働省医薬・生活衛生局、監視指導・麻薬対策課の発表による)。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495160131&Mode=0

 

デパスのほか、アモバン(ゾピクロン)も非ベンゾで向精神薬指定されていなかった睡眠薬だが、これも向精神薬に含まれることになった。

 向精神薬に指定されると、「麻薬及び向精神薬取締法」により「輸出、輸入、製造、譲渡等が規制」されることになる。

 今回、デパス、アモバン、他の3物質が向精神薬に指定されたのは、これら3物質に「向精神薬と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用を有する」と厚労省が認めたからである。

 また、デパス、アモバンについて、厚労省が発表した文章の中の「物質の概要」として以下の文言がある。

「本物質は、すでに向精神薬指定した物質と同様の中枢薬理活性を有しており、濫用による保健衛生上の危害を及ぼす恐れがあります。」

 

 デパスやアモバンが向精神薬に含まれることになった理由として書かれた文章だが、これを読むと、つまり、向精神薬というものは「濫用のおそれがあり」、「有害作用」を有し、「保健衛生上の危害を及ぼす恐れ」のあるものであると、厚労省が認めていることがわかる。

 だから、取り締まる必要があるわけだが、これほどの「恐れ」のある向精神薬を、果たして精神科で、どれほどの注意をもって扱われているか、かなり疑問と言わざるを得ない。

 

 ともかく、精神科、心療内科に限らず、内科や整形外科など他科においても、飴玉のようにホイホイ処方されていたデパス、アモバンが、向精神薬に指定されることで、今後処方に多少のブレーキがかかることを期待する。

 一粒のデパスが入口となって、最終的に殺人的な薬の処方に至った例が多いことに、この規制、今更ながらの感は否めないが……。

 それでも711に行った厚労省陳情が、結果としてこうした規制を進めさせる一つの圧力になった……と思いたい。