第111回日本精神神経学会学術総会のシンポジウム(「学校現場は精神科医の助けを求めている」というネット上の記事)について、先日お伝えしたように、これに関する皆様からのコメントをコピーしたものとブログの記事をコピーしたものに、下記の手紙を添えて、お三方に書留で送りました。

 末尾にも断り書きとして記した通り、この手紙をブログに公開します。

(大沼様の手紙を一例としてあげます。他のお二方にも、発言部分をそれぞれのものにして、同様のものを送りました)。

 

      
  

女子栄養大学 大沼久美子様

  

 はじめまして。  

 私は「子どもの精神医療を考える会」を立ち上げているフリーのライターの嶋田和子と申します。  

 会のかたわら、個人的にも長年、精神医療についての調査を行い、とくに医療被害に遭われた方の体験談をうかがうことに力を入れてきました。  

 お話をうかがった被害者の中には、子どもも多く含まれ、子どもゆえの被害の甚大さ、人生さえも左右しかねない被害の深刻さに胸を痛めております。  

 日本の未来を担うべき子どもたちが精神医療被害に遭遇する危機感や、被害者へのそうした思いから、一昨年『ルポ 精神医療につながれる子どもたち』(彩流社)という本を出版いたしました。本の中では「学校から精神科につながれて、被害に遭った子どもたち」のケースも複数取り上げています。  

 そんな折り、先日開かれた第111回日本精神神経学会学術総会のシンポジウムについて、MTPro というサイトに書かれていた記事、「学校現場は精神科医の助けを求めている」が目に止まった次第です。 

  

 記事中の大沼様の発言は、私には由々しきことに感じられました。  

――「養護教諭は精神科の医師とお近づきになりたい。どうぞ学校に来てください。先生方のクリニックを訪問させてください」  

これは、教育現場に身を置かれる人間として、自らの職責を放棄した発言であると私には思われます。

  

 養護教諭という仕事の困難さ、責任の重さ、日々先生方も努力されていることは重々承知しておりますが、精神科医とお近づきになりというこの発言は、あまりに精神医療というものを知らないがためのものだったのでしょうか。  

 大沼様は現在の精神医療の何をご存じなのでしょう?  

何を期待して、あのような発言になったのでしょう?  

ぜひお答えいただければと思います。 
 

 医療にかかって恩恵を受けるのは、その医療に診断能力が十分にあるという前提が必要です。しかし、精神医療に十分な診断能力があるとはとても言えないのが現状なのです。  

私は少なくとも300人以上の方から被害の体験談をうかがっていますが、精神医療は、誤診の多さ、エビデンスのなさ、薬の使い方の杜撰さ加減から、もはや医療として成立していないという印象を抱いています。

  

 そのような被害などほんの一部で起きていること、例外的な問題とお考えですか?  

しかし、大沼様が出席された日本精神神経学会、そこに所属されている医師とて同様、いや、むしろそこが被害の発生源とさえなっている感があります。同封したブログ記事の後半に紹介しましたが、老人施設で許可なく治験を行ってしまう、そういう人権意識が低く、人命を軽視していると言わざるをない医師が、この総会の会長を務めているのです。 

  

 大沼様は、精神科医に相談をして、何が解決できるとお考えですか?   

現在の精神科医はカウンセラー的対応より、ほぼ100%薬物療法となります。そして、精神科医の使う向精神薬の多くは、子どもを対象に治験を行っていないのです。  

 とすれば、安易に精神科につなげることが、どれほどのリスクを子どもたちに負わせることになるのか? それを先生方には考えてほしいと思います。

  

自分たちが安心したいから、そのために専門家の意見を聞きたいというお気持ちは理解できるものの、その専門家たる精神科医がどのような治療を行っているのか……そのような医療に教え子を手渡してはなりません。それが教師としての最低限の矜持ではないでしょうか。 
 

 私のそうした思いは、私自身が運営するブログの記事として書きました。また、ブログの読者からこの記事に対してじつに多くの、的確な、そして切実なコメントをいただきました。記事のコピーとともに同封いたしましたので、合わせてお読みいただければ幸いです。 

  

 つきまして、まことに勝手ではありますが、「子どもの精神医療を考える会」として、こうした教育現場の方々の発言を看過するわけにはいかず、大沼様のあのシンポジウムにおける発言の真意をお聞かせいただきたく存じます。一応、期日を区切らせていただき、2週間後の2015年7月10日までに、下記住所まで文書でご回答くださいますようお願い申し上げます。 

  

 なお、当日のシンポジウムに参加された足立区立六木小学校の東真理子様と世田谷区立東玉川小学校長の新村出様にも同様のお手紙を差し上げております。

  

 またこの文章は私のブログにて公開させていただき、お三方からお返事があり次第(期日を過ぎてもお返事がない場合はその旨)ブログ内でお知らせする予定でおりますので、ご了承ください。

 

  2015年6月26日   

                     子どもの精神医療を考える会

  

                           代表 嶋田和子