45歳のお母さん(恵美さん・仮名)からメールをいただきました。

 ご自身と、さらに長女(現在22歳)がともに精神医療でたいへんな経験をされたとのことです。恵美さんはダイエットや育児の疲れからの「パニック障害」、娘さんはもともと神経質なところへイジメがあり「パニック障害」、それがそれぞれ初診時の診断だったと言います。

 恵美さんには長男(弟)もいて、最重度の自閉症とのこと。知的に重く、小さい頃は苦労をしたと言いますが、現在は落ち着き、向精神薬は飲ませていないそうです。

さらに、ご主人は、長女の病気のストレスや狭心症のためか、44歳でくも膜下出血を発症し、平衡感覚や聴覚に障害が残りました。

「私たち家族は、長男は生まれつきですが、私や長女が精神科にかかるまでは、楽しく仲良く暮らしていました。しかし、今は正直、辛い日々です」

 まずは母親の恵美さんの体験談から紹介します。


ダイエットから不安感出現

「私はもともと神経質で、完璧主義で人に頼ることが苦手でした。仲間はずれにあっても親には一切話しませんでした。27歳で長男が生まれ、3歳で自閉症と診断されても、表面上は悩んでないように振る舞い、実際落ち込まずに、少しでもこの子に楽しいことをさせようと、12歳くらいまではプールや公園、旅行にと動き回っていました」


そんな恵美さんがダイエット(10㎏減量が目標)を思い立ったのが平成20年のこと。1日の総カロリーを1300キロカロリーくらいにしたという。確実に減っていく体重がうれしくて、とくに空腹が苦しいということはなかった。

 しかし、少しずつ「心の中に不安が広がるようになった」。「ダイエットで胃がんになったらどうしよう」、この考えがいつも頭の中に浮かぶようになった。

それでもダイエットは続け、結局平成20年12月に人生で初めてのパニックを起こした。

「夕食後喉が詰まる感覚があり、食道癌かも……とパニックになりました」

 その後、胸の痛み、3日に1度くらいの間隔で、お風呂に入っていると湧き上がってくる不安感……。

 しばらくそういう状態が続き、恵美さんもうつかも? と思い、近所の心療内科を受診したのが、平成21年6月のことだった。

医師は、「大丈夫。信号にたとえたら、今は青の点滅くらい。赤はうつ病。ソラナックス頓服で出すから飲んでください」と言い、恵美さんはその言葉で安心感を取り戻した。ソラナックスは飲まなかった。

その後はしばらくは忙しさが続き、不安感はなかったが、再び不安感が出てきた9月、再受診をすると医師から「ソラナックス飲めばいいのに」と笑われた。それでも恵美さんは飲まなかった。体を動かそう、そう考えて、スポーツクラブに入り、何とかやり過ごしていたという。


友だちの紹介で2軒目の心療内科を受診

 しかし、この運動が裏目にでてしまった。平成21年11月。スポーツクラブで少し無理をしたせいか、疲れから寝て起きたときに心臓のドキドキが止まらないほどの強い不安感に襲われた。耐えられず、いつもの心療内科に電話をかけたがつながらず、うつ病のママ友に電話をしたら、「うつっぽいね、私のかかりつけの心療内科は良いよ」と言われて、恵美さんはその心療内科を受診することにしたのだ。

そこの初診で出された薬は以下の通り。

デパス0.5㎎×3回

ソラナックス0.4mg×2回

ジェイゾロフト夜一錠

アモキサン10mg×3回

睡眠薬1種類


初診で(初診でなくてもだが)この薬の量はどうだろう。最初から抗うつ薬2種、抗不安薬2種、睡眠薬1種。

 しかしその頃、恵美さんには薬についての知識がなく、医師の指示通りに薬を飲んだ。最初はとにかく眠くて眠くて。それを医師に伝えると、「よほど暇なんだね」とわけのわからないことを言われ、その後、体調はどんどん悪くなっていった。

 恵美さんはメールに次のように書いている。

「起床時の吐き気、倦怠感、不安感。1度、勝手にアモキサンを丸1日飲まなかったら、苦しくなり、離脱症状を知らない私はそれを医師に伝えました。すると「薬を飲まないとダメだ。猿でも病気になれば薬草を食べる。薬を勝手にやめる患者は面倒くさい。あと2回こういうことをしたらあなたは診ないから」と怒られました。

それから真面目に薬を飲みましたが、12月の診察の終わりに、デパスを1日4回に増やし(就寝前)、ジェイゾロフトの量も増えました。眠れているのに何故? と医師に聞いたら「これが僕のやり方」と一言。ここには通いたくないと思い、自宅に近いAメンタルクリニックに転院を決めました」


Aクリニック・依存が専門という医師の依存のとらえ方

転院したのが平成22年の初めで、そこには結局、平成26年3月まで通うことになった。

 Aメンタルクリニックの初診は、当時のB院長だった。この院長は前のクリニックの院長とは正反対の物静かな人で、診察は10分くらい。恵美さんはまだ薬について知識はなかったが、それでも量が多いような気がしていたので、「デパスかソラナックス、どちらかにしたい」と言ったところ、医師は「いいですね。ならソラナックスを1日3回にして、デパスはやめましょう。アモキサンとジェイゾロフトはそのままで」ということになった。

当時の症状は、不安感はあったものの、パニック発作を起こすことはなくなっていた。

しかし、恵美さんにとってこの院長はなんだか物足りないような気がした。また、友人が同じクリニックに通院をしていて、他の医師――週に一度だけ通ってくる××医師が良いと話していたので、主治医を変えてもらうことにしたのである。

「××医師とはずっといい関係で、診察時間もかけてくれるし、良くなってるねと言ってくれたり。この時期は私はもう不安感は一切なしで、医師にもそう伝えました。

 それでも、ふらつきがひどくなったので、××医師に伝えると、「ソラナックスにそんな副作用ないなあ。聞いたことない」という返事。

また、「ソラナックスが切れる感じがわかります」と言うと「離脱症状、出ちゃったか」と笑いながら言いました。減薬について尋ねると、「あなたのやりたいようにやりなさい」と。

私はまだベンゾの害がひどいことを知らなかったので、少し減らしては失敗し、ストレスがあれば戻し、ソラナックスを服用し続けました。ジェイゾロフトとアモキサンはどうにかやめられました。この間に、長女のパニック障害で悩むことになります」

恵美さんは今から1年数か月前にネット検索し、ブログ等でベンゾの離脱症状について知ることになったという。自分の体調を考えても、ソラナックス3錠を飲んで、めまいがひどく、少し削って減らしただけで寝込むような状態。常用量依存だと思った。

 しかし……。

「××医師に、私は常用量依存ではないかと言ったら、今まで温和だった人が、急に冷たい顔になり、「僕は依存が専門だけどね。依存というのは、1日18錠とかを飲んでしまうこと」と言うので、いや違うと話したら、開き直り「じゃあ、あなたが依存症なら、今日からソラナックス飲まないで!! 出さないから。そうでしょう? 依存症の人とわかってて薬を出せないよね」と。私はもう頭に来て、「先生の言うことを聞き、ODもせず、真面目に治そうと努力し、ソラナックスを少し減らしただけで具合悪くなると言ってるのに、今日出せませんって無責任ですよね。言ってることおかしくないですか」と言いました。

そうしたら、「入院して一気断薬すれば、3日は眠れないけど10日でスッキリ退院できるよ」と言うのです。

私はあり得ないと思い、「私は子どもたちをこれからも見ていかなきゃならない大事な命なんです。保証も出来ない発言やめてください」と言いました。××医師は、私に最重度の障害児とパニック障害の娘がいることは知っています。

そして、その次の診察日、××医師は「アシュトンマニュアル知ってる? やってみる?」と言ってきました。が、「量の調整は自分でやって」と言われ、これはダメだと、昨年、平成26年4月、同じ市内の別のクリニックに転院をしました」


ソラナックスをメイラックスに置換

 転院先は、大きな病院の分院だった。初診時に、恵美さんが「ソラナックスをやめられない、毎日めまい、頭痛、聴覚過敏がある」と伝えたところ、医師からソラナックスをメイラックスに置き換える方法が提示された。

 主治医の指導は「まずメイラックスを2mg。ソラナックスは0・4㎎の半錠×3錠(ソラナックスの半分量を一気断薬)、さらに2週間後にはソラナックスを減らす」というものだった。

 しかし、恵美さんはメイラックスが身体に合うか心配だったので、いきなり2mgを飲まず、まず0.5mgを1週間飲んで、ソラナックスを減らし、その後、メイラックスを1mgに増やし、ソラナックスも減らしていくという方法をとった。

 そのことは主治医にも伝えていたが、ある診察の日、「メイラックスを2mg飲んでください。私を信じてください」と言ったのが恵美さんにはひどく印象的だったという。

そして、医師に言うとおり、その日からメイラックスを2mg飲み、ソラナックスは体調を見ながらさらに減薬を進め、置換開始から7カ月後の12月、ソラナックスは0.03㎎となった。

その量を見て、医師は、「もう飲んでないと一緒、薬効は無い、神経質」と言い、それで、ソラナックスをゼロにしたところ、年明けの今年の正月頃から、ひどいめまい、頭痛、胃腸のこわばり、倦怠感が起き、何日か耐えたが、長男の特別支援学校への車での送迎もあり、さまざま行事や契約などもあるため寝込むわけにもいかず、仕方なくソラナックスを1日0.06mg戻したという。体調は少し落ち着いたが、それでもめまい、ふらつきはある。ソラナックスの離脱症状である。

「今の主治医は女医で、離脱症状に理解ある感じでしたが、ダメでした。「メイラックスはほとんど離脱症状ないですよ。ソラナックス0.06mgなんて医学的には何も体に関係ないです」と言います。

 また、私がメイラックスをゆっくりやめるなら、粉末に出来ますかと聞いたら、「出来るとは思うけど、神経質になり過ぎだし、薬局の人が大変になるでしょ」と言われがっかりしました。

 さらについ最近の診察でも、「人生は上がり下りがあり、あなたは今、私にはわからない何かしらのストレスで体調を崩してる。出来ないことに悩まないで。悩むと体調がもっと悪くなってしまう。ソラナックスは11錠飲んでください」と言われてます。

私は体調は戻したいけど、ソラナックスは極力増やしたくない。それでも、0.06㎎から0.15mgに増やし、いまは落ち着いています。でも、このまま薬をやめられないとか、寝たきりになったら……と毎日頭から心配が離れません」


 それにしても医師の離脱症状への無知、無理解はなぜなのだろうと、いつものことながら唖然とさせられる。薬の量が微量になると、ほとんど問題視しないというのも、多くのケースで見られる医師の傾向である。

さらに、びっくりしたのは、依存が専門と豪語する医師が「常用量依存」を知らないとは……。「アシュトンマニュアルやってみる?」という台詞自体、本当の意味でベンゾの離脱について、あまり知識がない証拠のようである。