Mさんという45歳の女性(主婦)からメールをいただきました。

 数回に分けて、体験談を伝えてくれましたので、ご紹介します。




内科から心療内科へ

はじめまして。45歳、主婦です。

まとまった文章になるか分かりませんが、ブログを読んで、私も書きたいと思いました。

2013年8月猛暑の頃でした。体調不良で内科を受診しました。血液検査と問診の際、医者に「喉がつまることがある」とつい言ってしまいました。

すると医者、「安定剤を出しましょう」と。

メイラックス1mgが2週間分処方されました。

真面目に飲み、検査結果を1週間後に聞きに行ったところ、異常なし。しかし、その時、なぜか、内科の医師はある心療内科を紹介し、場所の記された地図までくれました。そして一言、「今はいい薬があるからね」と。

そのときにはまだ何も知らなかった私は、ピンときませんでした。

9月になり、日中眠気があるのが気になっていました。

そして、ある日、今まで体験したことのないきつさを感じました。今思えば、メイラックス2週間分を飲んだ後の離脱症状だったと思います。

でも、そのときはそんなことはわからず、私は紹介された心療内科ではなく、自分で調べて、女医さんの心療内科に行きました。

「きつい」というと、ここでは、リーゼmgと、漢方薬が処方されました。

ちょうどその頃のことです。たまたま新聞に、精神薬の離脱症状を乗り越えた女性の記事が載っていて、私はそこではっと気がつき、愕然としました。

リーゼを飲んでも体調不良は変わらず下痢が続きました。それを医師に言うと、「スルピリド」という薬が出されましたが、この記事のこともあり、ネットで調べて、この薬を飲むのはやめました。

それでもこの頃は動悸がひどくて辛かったです。

この病院は自宅から遠かったので通院も苦になり、近くの病院を探すことにしました。絶望的な気持ちでしたが、生活があるから、私には記事の女性のように、離脱症状を耐えるための時間のゆとりがない。

食欲がなくなり6キロ痩せ、外出できなくなりました。




ネットの情報より実名の医者を信じろ

その後、通いやすい病院を見つけて、そこを受診しました。年配の医者でした。

この時は夫が付き添ってくれて、診察室にも一緒に入りました。

医者からはざっと生育歴を聞かれ、「今はどんな状態か」と尋ねられたので、「体がきつい」と言うと、「軽いうつ病」と診断されました。

しかしこのとき夫が、ネットの情報から前の病院の薬を減薬したとか、飲んでなかったとか、医者に話してしまったのです。すると医者は「ネットの匿名より、実名の自分を信じて、まずは病気を治しましょう」と言いました。私は唖然としました。

処方は、パキシル12.5mgアモキサン10mg3回、エリミンmgでした。またしても、ひどい目にあったベンゾジアゼピンの睡眠薬かと泣きました。

帰ってから夫とケンカになりました。夫は医者を信じて疑いません。私が何を言っても信じてくれません。平行線のままと感じました。

そして、夫の目の前で、出された薬を飲みました。私はこの時、二人の男に殺されたと思いました。2013年11月3日でした。

次の日からは、離脱症状に、副作用が加わり地獄でした。パキシルで頭がファンファン鳴り、アモキサンでは5日間便秘になり、恥を通り越し浣腸をくれと頼んだりするほどでした。

最低限の家事以外は横になっている生活でした。

この時期、長男は高校受験でした。それなのに、私は母親らしいことを何ひとつできませんでした。卒業式、入学式も出てやれませんでした。残念でなりません。




自分で減薬・断薬をする

その後病院で医者から「どうですか」と聞かれたるたび、私は必ず「調子いいです」と答えるようにしました。そのためか、むやみに薬が変わったり、増やされたりということはありませんでした。なので、処方はずっと同じままです。

しかし、私は体調の悪さを薬の副作用と思い、2、3か月かけて、昨年の8月にパキシルを、10月にアモキサンを断薬しました。

幸いに激しい離脱症状はなかったような気がしますが、起きているあいだ、脳にしびれがあるように感じるので、後遺症かなと思っています。





今はエリミンを減薬中です。ようやく8分の1まできました。しかし、中途覚醒、早期覚醒があります。睡眠さえ薬に支配されているなんて、本当につらいです。

不思議なことに睡眠薬を飲み始めてから4、5時間しか眠れなくなってしまいました。ですので、今は自然の眠りを取り戻したいと切に願います。

昨年2014年は毎日が苦しかったのに、過ぎてみればあっという間でした。よく生きているなと思いました。人目を避け、ずっと家の中にこもる生活です。

今は体重は元に戻り、食事もとれています。歩くこともできます。しかし外出できない。

それは、自分の顔が汚いと思うからです。去年息子の友人が来た時、すごく驚かれ、ショックでした。その頃は痩せていたのでなおさらだったと思います。今は眉からふけが出ているような、いくらお化粧をしても粉が吹き、暑い時期はテカテカになり、外に出るのが怖いのです。

それに表情がない、笑えない。人はさらに怪訝な目で私を見ることでしょう。また自分の中で「ベンゾイコール合法麻薬」という思いがあり、それを飲んでいる、だから他人は私のことをおかしい人と見ているのだなと、そんな思いも消せません。

こういう状況を医者に伝えると、また新たな病名がつくのでしょうね。

でも、かこさんのブログで真実を知ることができ、まだ冷静でいることができます。それでも、いろいろな体験談の中にあるように、自分もこれから先最悪の状態に追い込まれるのかという恐怖もあり、怯えています。

今つらいのは、顔のことと脳のしびれでしょうか。つらいですが、体は動くので、息子のお弁当は作っています。

自殺はもちろん考えたことがあります。でも実行はできませんでした。プチ自殺はあります。笑えますが、市販薬をひと瓶飲んだり、水や醤油を大量に飲んでみたり、アイロンを頭に落としてみたり……。でも苦しいだけでした。

今も1日を過ごすのが、1分1秒がつらいと感じます。こんな生き地獄があるなんて。

最後に、私もこの先どうなるかわかりませんが、かこさんのブログに成功体験談が増えることを心からお祈りいたします。ありがとうございました。




精神医療は、すでに内部は崩壊している

Mさんのきっかけは内科受診です。「喉がつまることがある」――その一言がベンゾ系を飲むきっかけになりました。

2週間が過ぎ、そのまま何事もなければMさんが心療内科につながることはありませんでしたが、Mさんの場合2週間でベンゾの耐性がつき、離脱症状が発現。そのことで、結局、精神医療につながることになってしまったのです。こうした例は非常に多いと感じています。そして、その後はお決まりの、副作用や離脱症状を病気とされ、Mさんの場合、「軽度のうつ」ということで、抗うつ薬の処方です。

まさに悪循環の輪の中に入りかけてしまいましたが、Mさんの頭の中に、新聞記事の情報があったのは幸いでした。

医師に対する盲信を捨て――体調の悪さを絶対口にせず――薬の被害を知っているため、自らの力で減薬していったのです。

それにしても、こうしたケースのどこに「医療」があるのだろうと思います。医師はもちろんMさんが薬を飲み続けていると思っているはず。しかし、患者は医師に本心を語らず、自分で薬を減らして、ひたすら離脱症状に耐えている……これはもはや「医療」とはいえない状況です。精神医療の内部はもはや崩壊していると言ってもいいと思います。茶番であり、喜劇でさえあります。

そして、この医師が言ったというセリフ――「ネットの匿名より、実名の自分を信じて、まずは病気を治しましょう

そういう医師の処方が最初から抗うつ薬の併用なのです。医者という身分にものをいわせて、患者を信じさせておき、そのくせ、ろくな治療もできないのでは、詐欺に等しい。

しかし、この医師はおそらくこう考えることでしょう。いずれMさんが完全断薬に至り通院をやめたとき、「自分が治した」と。




チャールズ・メダワーの『暴走するクスリ? 抗うつ剤と善意の陰謀』という本の中に、興味深いことが書かれていますので、引用します。1972年、Marryという医師が記した言葉です。


「たくさんの医師が私と同じような経験をして戸惑ったことがあると思うが、ある典型的な内因性のうつ病の外来患者に三環系抗うつ剤を投与したところ、三、四週間後に彼女が再診に来た際かなり症状が改善していた。私が「だいぶ良くなっているけど薬は続けなくてはいけないよ」と言ったところ、『いや、あの薬は私に合わなかったので二、三日飲んだだけで止めてしまいました』」



笑い話のようですが、これが精神医療の多くの現実ではないでしょうか。

しかし、日本の医師には、この例のように、真実を知る機会があまりありません。

医師や医療に絶望して、黙って通院をやめて転院していく人がどれくらいいるでしょう。そして医師は、そういう人のことを都合よく、「改善したから来なくなった」と受けとめているのです。

そこが彼らの自信の根拠になっているとしたら、完全に医療から離れることができた段階で(断薬後、体調を取り戻して、薬が必要なくなった段階で――というのは、日本の場合、治療途中で医師の意に背くようなことを言うと、意地悪をされることがありますから)、この本に登場する女性のように、「本当のこと」を医師に伝えたほうがいいのではないでしょうか。自分の処方は正しかったという間違った思い込みを抱き続けていては、その医師の処方の腕が上がることは決してありません。自分の治療がいかに患者を良くするどころか苦しめただけだったか、知らない医師はおそらくたくさんいます。

Mさんの回復を祈っています。