今日は短めの体験談を。

 東北地方のある精神科病院でのこと。30代の男性(Aさん)は、6年ほどベンゾジアゼピンと抗うつ薬を飲み続けているが、最近、体調がすぐれず、ネットでいろいろ調べた結果、薬をやめようと考えて、この病院に減薬の相談に行った。

 Aさんは医師に、自分の飲んでいる薬についてあれこれ調べたことを述べ、どうも自分はベンゾの常用量依存ではないか、だから減薬していきたいと言った。

医師はAさんをちらっと見て、

「ネットとか、よく見るんですか?」と訊いてきた。

「ええ、まあ」とAさんがあいまいな返事をすると、医師は続けてこう言ったという。

「ネットなんか参考にならないからね。フリーライターとかいう人が精神医療についていろいろ書いているようだけど、ああいうの、気にしないでください」


 そのときAさんはベンゾ系の睡眠薬2種、抗不安薬2種、それと古いタイプの抗うつ薬を飲んでいた。で、結局、その医師がやった「減薬」は、まず抗うつ薬の一気断薬。それとリスパダールの処方である。

 リスパダール2㎎を2錠(就寝前)。加えて頓服としてリスペリドン(リスパダールのジェネリック)0.5㎎を1錠。

 そして、「今飲んでいるベンゾは急にやめるといけないので、そのまま服用してください」とのことだ。

抗うつ薬を断薬して、代わりにリスパダールを処方するというので、Aさんは、リスパダールをうつ病の薬と思い、医師にそう質問した。

すると、医師は、「統合失調症の薬だけれど、うつ病にも効果がある」と説明。「ともかく、いまは薬物依存になっているので、この薬を飲んで、それからベンゾを減薬していきます」という。さらに、

「それで、もし、(リスパダールの)副作用が出たら、抗パーキンソン病薬の処方も、様子を見ながら考えます」と。

現在、すでに不安感が強く出ているAさんだが、診察後、自己判断でリスパダールは飲まず、これまで通りの薬を飲むことにした。

それにしても、統合失調症という診断でもないのに、最初からリスパダール1日4㎎(頓服も入れれば、4.5㎎)で、しかも、副作用がでることを想定しての抗パ剤の提案、というのは、どうなのだろう。

フリーライター云々はおそらく私のこと、このブログを指しての言葉だろう。その医師はまだ若い医師とのことだから、私としては被害事例を熱心に読んでほしいと思うのだが、この医師は、そうではなくて、どうも私のことやこのブログの存在を、快く思っていないようである。「医者でもない外野が勝手に騒いで、治療の邪魔をしている……」くらいに考えているのだろう。

しかし、体験談は私が一人で勝手に騒いでいるのではなく、そういう事実が「多数」存在することの証拠である。

そういう被害事例も含めて、ネットの情報は「気にしないでください」と言った医師は、で、ベンゾをやめるのに(しかもこの時点でベンゾは1ミリも減っていない)リスパダール4㎎(+0.5㎎)の処方なのだ。

以前のエントリで取り上げた記事――ベンゾの減薬にメジャーを処方することに対する批判の記事を念頭に、「ああいうの、気にしないでください」という発言だったのだろう。http://ameblo.jp/momo-kako/entry-11843019037.html


ということは、あんな記事など気にしないで、自分のいうことを信じて、リスパダール4.5㎎飲めば、ベンゾをやめられる、と言いたいわけである。

確かに、離脱症状は医師にとっても厄介なもので、正直、医師にはどうにもできない部分が大きい。

辛い症状は、メジャーを飲めば、それなりに抑えられるかもしれない。そうすれば、一時的にも患者は満足して、医師に感謝するかもしれない。

しかし、そのあとどうするのだ。

ベンゾからメジャーに依存を移しただけで、結局、薬に振り回されていることに何のかわりもない。いや、それどころか、ずっと悪くなっている。

現に、ベンゾの減薬にジプレキサを処方され、ベンゾはやめられたものの、次にジプレキサを減らしたら、以前にはない重篤な症状がでてしまい、たいへんつらい状態に陥っている人のケースもこのブログでは取り上げた。


それでも、そんな話は「気にするな」というのなら、わかりました、それなら、薬物依存で苦しみ続けるAさん見事治してみせてほしい。Aさんにはこの病院にもう通院する意思はないが、そこまで言うなら、ぜひやってもらいたいものだ。

私は何も精神科医の先生方と敵対するつもりはないのである。医者として患者を、治せないにしても、せめて良い方向に向かうように(治療、アドバイス、アプローチ)してくれればそれでいいのだ。

いま、目の前に出ている症状を抑え込むことだけが「治療」ではない。そうした「治療」の積み重ねが患者にとって、結果的にどれほどのダメージになってしまうか……患者を、人生という長い時間を抱えた一人の人間として診てほしい。

だいたいベンゾをやめるのに、リスパダールが4(+0.5)㎎も必要ですか? さらに出てきた副作用を抑えるために抗パ剤(この薬には幻覚など、向精神薬と同様の副作用もある)を使用するとは……。

結局、そういう「治療」がさらなる症状を呼び、さらなる薬を必要とするアリ地獄へと患者を陥れてしまうのだ。

ベンゾをやめたかっただけなのに、いつの間にか薬剤性の疾患にされてしまう。そういう被害がたくさんあるのに、このブログにはそういう被害が詰まっているのに、もし読んでいるのだとしたら、なぜ、そのことがわからないのだろう。

「ああいうの、気にしないで」と片付けてしまう、その神経こそ、精神医療の自浄能力の欠如を決定的に物語っている。

 若い医師とはいえ、すでに十二分に現行の精神医療に染まってしまっているのだ。


 おそらく、このエントリも読んでいることだろう。ぜひ、ご連絡いただければと思います。(病院名、医師名を出して呼びかけたいくらいだが、地域内のこと、Aさんに迷惑がかかるかもしれないので控えます)。リスパダールを処方しつつ、ベンゾの減薬、そして最終的には薬物依存からの脱却について、詳しくお話を伺えれば、私もたいへん勉強になります。