離脱症状に関する体験談をいくつか公開します。

まずは男性(Gさん)のケースです。

ベンゾが嫌だと言うと、「不眠」にメジャーを処方されるようです。




Gさんは、最初は内臓の病気(その点は今はすっかり回復している)のため大学病院の消化器内科で診てもらっていたが、なかなか改善しないことで不安が募り、それを医師に告げるとデパス(日/0.5mg)を処方された。

それを4週間ほど服用したところ、さまざま異常な症状がでてきた。今から思えば、それはベンゾ1ヶ月服用による常用量依存状態で、離脱症状だったのだろうが、そのときはそんなことはまったく知らなかったため、Gさんは同じ大学病院の精神科を受診した。

デパスに変えて今度はワイパックス(日/1.5mg)が処方され、Gさんはそれを3か月ほど、医師の指示通りに飲んだ。

しかし、ワイパックス服用中、めまいの症状が現れたため、Gさんは薬についてネットで調べていくうちに、ベンゾジアゼピンの怖さを知ることになったのだ。

そこでワイパックスを一気に断薬した。すると、めまいなどの身体的症状はなくなったものの、強烈な不眠が残ってしまった。

その強烈な不眠からGさんは体調を崩し、知人の紹介で、大学病院とは別のある独立行政法人国立病院機構に入院した。

入院に際してGさんはこれまでの経験から、「ベンゾジアゼピンだけは嫌です」と医師に告げた。医師はその言葉を受け入れて、非ベンゾのマイスリーのみの入院生活となったが、不眠は一向に改善されない。そして、病院内のカンファレンスでGさんのケースが検討された結果、非定型抗精神病薬の処方が決定されたのだ。

メジャーを飲むようになってからは眠れるようにはなったが、今度はベッドから起き上がることができなくなり、それを医師に告げると、SSRIが追加となった。

入院期間は2ヶ月間。 その間、薬の影響で、手が震えて字が書けなくなったり、起き上がれなくなったり。さらに、退院後も寝たきりの状態が1ヶ月ほど続いた。

またしても薬のせい? と思ったGさん。ネットでいろいろ調べているうちに、メジャーとSSRIの恐さを知ることになったのだ。

Gさんは3ヶ月服用の後、こちらも一気に断薬した。




現在、断薬して7か月が経過しているが、いろいろ不調が出ているという。

身体的症状としては、上半身のピリピリ感、舌の痺れ、胸のザワザワ感、胸痛、フワフワ感。睡眠については、日に4~6時間、細切れ睡眠もあるものの、改善されている。

Gさんのメールから。

「一番辛いのが、精神的症状です。日に何度も現れますが、胸のあたりがモヤモヤ~として、ネガティブ思考というか、訳の分からない「嫌~な感じ」というか、「過去の嫌な思い」みたいな感じになって、「あーもうどうにもならない」とか、「どうしたらいいのか分からない」みたいな思いが駆け巡っています。焦燥感(じっとしているのが辛い)は、今までなかったのですが、6ヶ月を経過して現れました。

断薬して7ヶ月です。「時間が薬」と言い聞かせて頑張ってきましたが、心が折れそうになる時もあります。……

今も、会社の関係で診察には行っていますが(主治医は私が断薬したのを知りません)、先日、独立行政法人国立病院機構の担当医に「何でメジャーやSSRIを処方したのか」と聞きましたが、「寝れないと体調を崩すので致し方なく処方した」とのことでした。」




入院当初Gさんが訴えた「ベンゾジアゼピンだけは嫌」という言葉を「忠実に」守って、「不眠」の症状に抗精神病薬を処方する。

そもそもこの「不眠」がベンゾの離脱症状という認識が医師にあったのかどうか?

メジャーの経験がない人がメジャーを飲めば、眠れるようにはなるだろう。眠れるというか、気絶するというか、ともかく不眠は解消する。

そして、メジャーによって寝たきり状態になったら、今度はそれを「うつ」の症状ととらえたのか、アッパー系の抗うつ薬の処方である。ブレーキを踏みながら、アクセルを踏むようなもの。

Gさんの質問に答えたように、精神科医は、不眠の場合、もう手段を選ばず、ともかく眠れることを最優先させるのだろうか。眠れればいいってもんだろうか。

では、眠れたあと、医師は処方をどうするつもりだったのか。抗精神病薬断薬後の不調にどう対処するのだろうか。




Gさんのケースは内科から処方されたデパスが入り口となっている。内科が処方するデパス(あるいはリーゼ)による被害は実に多い。日に0.5㎎のデパスが最終的に抗精神病薬の処方へとつながって、結局7か月たった今もその離脱症状に苦しんでいるのである

この処方を行ったのは「独立行政法人国立病院機構」である。まったくもって見事なレベルである。




もう一つ、紹介します。

ある女性のケース。夜勤のある仕事のため、睡眠がうまく取れず、不眠症気味になり、ベンゾ系の睡眠薬にどっぷりつかって7年間。副作用と常用量離脱症状でどうにもならなくなって、入院しての断薬を決意した。

ネットで調べて、家から近い病院に問い合わせたところ、ベンゾの離脱症状、減薬に対応しているとのことで入院を決意。

ところが……である。

主治医は「絶対、薬をやめさせてあげる」と何度も言うが、実際の処方は、多少のベンゾにプラスして、なんとセロクエル、ルーラン、頓服にエビリファイである。

ベンゾの離脱症状に、複数の抗精神病薬を処方する。



 確かに、こういう薬をこれだけ飲まされれば、ベンゾはやめられるかもしれない。しかし、そのあとどうするのか……そういう視点が完全に欠落している。メジャーには離脱症状がないと考えているからこういうやり方ができるのだろうか。まったくもって、こちらも理解不能の、「見事な」処方である。(ちなみにこの女性とは入院前からメールのやり取りをしていて、この処方を知らされたとき、退院、転院を提案してみた。幸い、今は別の病院に転院して、なんとか離脱症状を抜け出しつつある)。




 さらにもう1例。

38歳の女性・A子さん。こちらも(今から思えばだが)、最初に婦人科で処方されたデパスが、精神科の入口になってしまったケースである。

 定期的に処方されていたデパスを飲むうちに、うつ状態、不眠に悩まされるようになり、4年前にメンタルクリニックを受診。

不眠の裏にはうつが隠れているとのことで、ハルシオン、サイレースのほか、SSRIのジェイゾロフトを処方された。

飲み続けたが、昨年、風邪を引いたことで受診できず、そのまま断薬状態となった。そこで凄まじい離脱症状が出現し、それを医師に伝えたところ、「いつもの薬を飲んで下さい」と言われただけだった。そのことでA子さんは医師への不信感が募り、ネットで情報を集めた結果、自己流で減薬、断薬を行った。

そして、離脱症状である。ひどい不眠やめまい、体の揺れ、痺れ、肩、背中の刺すような痛み、呼吸困難、たくさんの症状が出て、以前処方されたまま保管していたハルシオンやセルシンを飲んだところ、今度は凄まじい焦燥感と希死念慮が襲って来たので、通院をやめていたメンタルクリニックを再び受診した。

この医師は離脱症状を一切認めなかったという。

A子さんが現在の辛い状態を離脱症状として説明すると、医師は笑いながら、離脱症状についてこんなふうに言った。

「一時、新聞で騒がれてたけど、あなたの場合は離脱症状じゃないですよ。でも、そんなにベンゾが怖いなら、デパケンを飲んでください」

 ということで、デパケンが処方された。

 しかし、不眠をはじめ、希死念慮など症状はなかなか治まらない。




セカンドオピニオン的に行った病院では、サイレースを処方された(飲んでいない)。

また、著書で、安易な抗うつ剤やベンゾジアゼピン系睡眠薬の処方を批判している心療内科の医師にメールで相談に乗ってもらった。この医師は、離脱症状を漢方や鍼灸などで緩和し、最後は漢方もやめる方針を取っている(と著書などでは言っているようだ。このクリニックの院長は最近では、『薬なし 自分で治すパニック障害』という素敵なタイトルの本も出している)。

さらに「丁寧なカウンセリング」もHP上でうたっていたので、A子さんは期待を込めて受診した。しかし、医師からは、あっさりサイレースを処方されただけだという。




症状がつらく、どうする事も出来ずに、またしても以前通っていたメンタルクリニックを受診した。すると、「ベンゾを飲みたくないなら」と今度はジプレキサが処方された。

ベンゾを嫌だというと、メジャーが出されるのが、精神科のセオリーのようである。

A子さんとしては副作用のことを考えて飲みたくなかったが、ご主人と母親から、「家族みんなに迷惑をかけて! (薬について)インターネットの戯言を信用するのか!」と責められ泣きながら服用したところ、寝たきりになってしまった。服用は2日で中止した。




さらに、A子さんは東京女子医科大学にも行っている。この病院の神経精神科は、「睡眠薬・抗不安薬の服用に際しての注意事項」というパンフレットを作成して、ネット上でも公開している、ベンゾの減薬に「理解」のある医療機関であるらしい。

http://www.twmu.ac.jp/PSY/images/image-psy/pdf-psy/suimin-koufuanyaku.pdf




この病院は昨年8月26日の読売新聞でも、減薬を支援する病院として紹介されている。

以下部分的に引用する。

「同病院神経精神科医師の稲田健さんも、複数の薬を長く飲み続けてきた患者には『1年後に量を半分にできたらよしとしましょう』とアドバイスしています。不安を感じやすい患者には、それくらい慎重に対応する必要がある」と話す。だが、同病院のような減薬支援を行う病院は少ない。」

しかし、離脱症状を訴えるA子さんに対して稲田医師は、こう言ったというのだ。

「断薬してもう3ヶ月以上経っているなら、ベンゾは抜けているはず。貴方の症状は離脱症状ではなく、今まで薬でマスクされていた症状だ。睡眠できないなら、ユーロジンかセロクエルを処方します」


さらに、A子さんがめまいや身体の内部の震えなど明らかなベンゾの離脱症状を訴えたところ、医師は聞きなれない病名を告げ、ベンゾ、メジャーの他にSSRIを処方すると言ったというのだ。

そこで、ネットで調べたベンゾ離脱症状のことをA子さんが質問してみると、稲田医師は少しオドオドした様子で「ネットでいろいろ騒いでる人たちがいるみたいだけど……(所詮、素人の意見だから、という雰囲気)」と言っていたとのことである。


さらにもう一人、稲田医師を受診した人がいる。ベンゾ服薬数十年、ここに来て不調(うつ状態)がでたため減薬を考えて、この病院にたどり着いた。稲田医師は診察後、「まずはうつ病を治してから、減薬を開始しましょう」と提案。抗うつ薬を処方した。これでうつが治ればいいが、治らなかったら、ベンゾだけでなく、今度は抗うつ薬も飲み続けることになる。




3ヶ月以上たっているので、離脱症状ではない……。これが、減薬をうたう病院の医師、しかも精神薬理学を専門とする医師の意見である。

そして、この稲田医師のような意見(離脱症状は数週間しか続かない)といった考えをする医師は非常に多い。

確かに、薬の成分は3ヶ月も経っていれば体から抜けているだろう。しかし、薬が与えた影響(自律神経やホルモンバランスに与えた影響)は、薬が体から抜けたからといってすぐ消えるものではない。医師はそれを離脱症状と言わないのかもしれないが、だとしたらこれは「後遺症」である。

しかし、そういう考え方でもないようだ。稲田医師もそうだが、「現在の症状は離脱症状(後遺症)ではない。それはあなたが元々持っていた症状である」というのである。この考え方でいくと、多くの人が結局、再び薬を飲むことになる。断薬など絶対にできない。

しかし、この医師、あるいは病院が、パンフレットを出していることもあり、減薬断薬、離脱症状で苦しむ人を引き寄せていることは確かだろう。そして、いったいどれくらいの人が、減薬・断薬どころか新たな薬を処方されていることか。




 離脱症状を理解したうえで、減薬・断薬をサポートしてくれる医師、病院を見つけるのは至難の業である。私もしばしば病院を紹介してほしいといわれるが、紹介できるような病院はほとんどない(特に関東では)。

 ホームページや著書、表面上は離脱症状への理解を示し、ベンゾを批判し、減薬をアドバイスできるかのような姿勢を見せても、蓋を開けたら、以上のケースのようなことが多いのである。

 とくに安易な抗精神病薬の処方が目につく。

 確かに、離脱症状に少量のメジャーが有効なことはあるかもしれない。しかし、上記の例では、その処方の仕方、考え方から見て、処方のやめ時もわからないまま、いずれなし崩し的にメジャーが増えていく……少量を慎重に、反応をよく観察しながら……そういうきめの細かい薬の使い方とは程遠い。


 ベンゾの離脱症状に抗精神病薬を処方する……どこまでいっても医原病から抜け出させないつもりだろうか。