ぷに「一言で言って、私たちがそれに答えちゃいけないですよね。専門家でない私たちが答える資格もないので。私たちのグループでもそういう相談が来ると、まず私は自分の体験を話します。うちの場合はこうでしたと。で、薬が必要だったのかなと今は思っていますと言いますね。

それといろいろ質問してみたいですね。調子が悪くなって入院したと思うのですが、どういうふうに調子が悪くなったのかとか。また、薬がいろいろ変ってますから、まずはきちんと薬の整理をして、どの薬が入ったらどんなことが始まったか、どの薬をやめたとき、どれくらい経ったらどんな症状が出たのか、そうしたことをまず家族が知ってくれと言います。整理をしないと、この子にこの薬が合ったかどうかわからないし、それを知らなければ病院に言うこともできないし。もしここで、じゃあこの薬いらないと答えて、いらないと言われたから抜いたのに、いいことないけど、どうしたらいいですかという質問が来るだけなんです。

それはもうさんざんやってきたので、やっぱり家族がまずはきちんと把握する必要があることを伝えます。この薬を飲んでからこういう新しい症状が出ている、じゃあ、これはもう病気の症状じゃないなとか、そういう見極める力をつけてもらうことからやんなきゃいけないと思っています。だから、減らす時も、減らせと言われたから減らしたじゃなくて、減らしたらどうなったからもうちょっと減らせるとか、いやもう少しゆっくりの方がいいとか、もう試行錯誤しながらやっていくしかない。自分のなかで、大丈夫だったと納得して、減らしていく。そうすれば後悔はないです。

やっぱり、急に抜くと離脱症状はすごいんです。今までなかった症状が出るので、離脱症状のほうが怖いですね。だから、簡単に減薬減薬、ゼロに向かってとか言うのはちょっと待ってという感じです。そういう情報で、薬って怖い、とあわてて減薬をやると、とんでもな副産物が来ると思う。やるんだと決めたら、だれの責任でもない、自分たちで把握して、この子にとってこの何㎎は必要なんだと思ったら、減らせと言われてもいや減らせないと言い張ってもいいと思う。さんざん薬を入れられて、医者のせいにしたって、治らない、苦しんでいる子どもを何とかしなければということです。

うちの場合、最初に病院に連れていったのは自分だったので、もうやるしかなかったと思うし、だったら子どもを苦しめた分、様子をよく見て、この薬じゃないな、じゃこっちをやってみよう、で変化がない、じゃあ、大丈夫だから減らしいこうとすごく慎重にやりました。仲間のあいだでも、そうやって、減らしていくときには8分の1削ってみてとか、それで2週間たったら連絡し合う。どうだった? 削っても変わりなかった、じゃあ、行けるねって。またもう8分の1やってみようって。個人でやっている人は、やっぱり薬が入っていると重たいので、もっと早く減らしたいという人もいるけれど、気持ちはわかるけど、減らさないで、もうちょっとって、励まし合いながら、でも自分の責任としてやるようにしている」


かこ「そうですね、こういう相談をくださる方は、やはりあまりまだ勉強をしていない段階だと思います。やっぱり怖いので医者に頼りたい、減薬も医者にやってもらいたい、自分で引き受けたくない……」

ぷに「医者に頼りたいって、私も最初は、そういうものだと思っていたんです。がんの治療でステージがいくつならこういう治療をするというのがあるように、精神医療にもそういうのがあると思っていた。だから任せていたわけです。でも、薬のせいだと言われたときにひっくり返って、誰も信用できなくなったけど、頼れるところはやっぱり医者しかないし、薬を出してくれるのも医者しかいないから、信じるしかない。でも、違うかもしれないと感じていたけれど、何も知らないことを始めることへの不安はあった。またその反対に、減らせばいいみたいなところから、減らしていくのはとても怖いことなんですね」

かこ「私も責任を感じる部分はありますが、最近、たくさん飲んでいて副作用で何か変と思って、いろいろ情報があって、薬っていけないんだと思って、医者は減らそうという話にはならないので、どうすればいい? じゃあ、やめちゃおうっていうことで、一気にやめてしまう人が結構いる。その後いろいろ症状が出て、引きこもりになって。薬を戻すのももう躊躇がある。やっぱり薬を戻すのは……戻さないほうがいいですよね?」

ぷに「そんなこと聞かないで(笑)。でも、飲んできた期間、それによって、ちょっと戻してやり直せるのもあるし、長いあいだ飲んできたのをガンとやめてしまったら、ある程度戻さないと無理というのもある。2、3日のうちなら、戻せるからちょっと戻してみたらと。それからもう一度ゆっくりやろうよというのはあります。

怖いなと思ったのは、減薬がスーッと行くタイプと行かないタイプがあって、どうしても薬が行ったり来たりする人がいる。それはうんと薬過敏な人。飲んでいるときと抜いているときが同じなんです。変化がない。もともと薬過敏を持っていて、その人に薬を減らす減らさない、ゼロにするというのは、誰も言ってはいけないと思う。やっぱり家族、本人次第。ただ、薬を飲んだり、減らしたり、やめたりを繰り返すと、過敏性は増してくると思う。どんどん薬剤過敏がひどくなって、もう大変なことになる。

 たとえば、薬剤過敏があって、リスパダール2、3㎎で、あとちょっとというときに、それを待ちきれなくて一気に突然薬をやめた人の離脱状況なんて、もうたいへんです。何十時間も踊りっぱなし、すごい元気で、覚せい剤が入ってます状態になる。ピンポンダッシュしながら、多大な迷惑をみんなにかけながら、自分で警察に走って、助けてって。そういうのが2~3か月続くんですよ。その前はいい感じで、もうちょっとだねと言っていた子が、突然やめたらその状況。だいたいそうです。それが3か月後に来る人もいるし、すぐそういう状況になる人もいるし。

それでも1年我慢すれば何とかなることもある。その人はちょっと戻したこともある。そういうことを何度かやって、お母さんもこれじゃあ近所に迷惑だし、自分も寝れないし、それで薬を戻す。だけど本人が楽になると飲むのをやめてしまう。そうなるともう混乱が来て、その繰り返し。今回はもうお母さんも歳だし、その家族も7年くらいやっていて、今回はもう戻さない、もう入院もさせないと、薬ももう本人が勝手に断薬してしまったので、もう踊りも勝手にさせておくと言ってます。今その状況で4か月以上たっているので、あと6か月もあればちっとは違うよねって。

 で、本人は踊っていたり、はしゃいでいたりするけれど、ときどきこっちに戻ってくるんですね。踊りながら、赤信号ではちゃんと止まるし、外に出ていちゃって、どこ行ってたのって聞くと、○○スーパーと答えてくれる。ときどきそうやって戻ってきてはいる。そういう状況を乗り越えていくと、点が線になって、認知が戻ってきて、よくなってくる。だから、途中の大騒ぎがあるということを知らないと、誰かのせいにしたりして、それでは前には進まないと思います」


かこ「2月4日の中日新聞に出たんですけど、減薬の記事のわきにこんなことが書いてあったんです。来年度の診療報酬の改定で、抗精神病薬だけでなく、抗うつ薬とか抗不安薬などの使用を適正化する目的で、中医協が「通院、在宅の精神療法の診療報酬を、多剤処方の場合減算する」という方向を打ち出している。そして、記事では、日本精神神経学会のある医者が懸念していると、そういう薬は一気断薬は危ないので時間をかけてしなければいけないが、通院患者を受け入れる多くの医療機関は、そういうことを十分認識せず、診療報酬の見直しによって安易に薬を減らす恐れがある、と記事にさらっと書いてあります。が、これはよく読めば、そのへんのクリニックの医者は薬の減らし方さえ知りませんよいうことを言っている」


薬を飲まないなら、学校に来ないで

かこ「もう一つの相談です。16歳の息子さん。場面緘黙的な特徴はあったものの、成績はまあまあで、進学校に入った。進学校なので、テストや宿題がたくさんあり、そのストレスかどうかわからないが、被害妄想的なことを言ったり、周囲の音が気になるのでずっと耳栓をしている、外出を嫌がって電車に乗れない。それでも「がんばれ」と励まして学校に行かせて、そのストレスのせいか学校の同級生につかみかかったり、蹴ったりしたら、学校から精神科に行ってくださいと言われた。仕方なく受診をしたら統合失調症という診断。医者は、はやく薬を飲まないと手遅れになると言い、学校は学校できちんと治療をしないのなら学校に来ないでくださいと言う。お母さんとしてはこの学校はやめざるを得ないと、今では学校はやめて、薬は飲んでいないが、ずっと引きこもり。市に相談したら、はやく受診をして薬を飲ませてくれと言われたと。現に、隣が悪口を言っているとか、外に飛び出したり、突然怒り出したり、そういう症状があって、薬は飲ませたくないけどこういう症状だとやはり薬は飲ませないといけないのですかと、そういう相談です」

ぷに「私の主人のほうの親戚の子がまさにこの状況で、義理のお姉さんから電話が来て、学校から注射をするか薬を飲ませないと来るなと言われたと。今、学校ってそうなんですよね。だから、そんなこと拒否しろって私言ったんです。でも、学校に行かないと困ると思っているでしょうって聞きました。私もそうだったけど、本人はもっと思っているし、学校に行かないといけないと思っている。

でもうちは長女があんなことで中学で終わって高校に行っていないですね。二人目の息子は小学校で終わって、中学3年間不登校で、高校は通信教育だった。で、いま病院事務の仕事をしています。一番下の娘も高校2年のときに、ぜんそくがあって通信に変わった。それでも全然大丈夫で、学校に行って大学に行っても、大したところに就職していない人はいっぱいいるからって姉に言って、頭だけじゃなくて、何か特技を身に着けた方がいいよって。よく言うんですけど、明るい不登校、明るい引きこもりでいいじゃないかって思います。親も恥ずかしがらずにね、行かなくて結構ですって、みんなでやろうよって言ってます。子どもだって、そのうちお小遣い欲しいで、バイトくらいする子になるし、パソコン大好きならそれでいけばいいし、お母さん死んじゃったら、食べなきゃいけないからちょっと生活保護をもらおうかなと言い出す人もいるし、そうなればちゃんと動くんですよ、だから、学校なんてやめようって」


かこ「この16歳の男の子は、隣が悪口言っているというのは、きっと……」

ぷに「そう、学校に行けていない自分の悪口を言っているに決まっていると思っている。だから親も、当然そういう悪口が聞こえてくるよなって思っちゃえばいいんです。病気と思わない方がいい。医者に連れて行ったら絶対病気になるけど、自分だったらそうだなと思うと親も納得できて、そうなると子どもも安心して、お母さんが辛いってわかってくれたって思うと、案外よくなったりする。その方が全然近道。病気で薬が入ると遠回りになっちゃう」

かこ「安心して学校に行かなくてもいい家にすればいいわけですね」

ぷに「そう」

かこ「この本で問題にした早期介入というのは、そういうひきこもりの子ども、不登校の子どもは、裏に精神疾患が隠されているからそういうことをしているということで、何とか精神医療につなげようと。それで大した症状でもないのに安易に統合失調症という診断がついて、早く薬を飲まなければどんどん悪くなるという脅迫的なところで親を追い詰めているところがありますね」

ぷに「そうですね、うちの勉強会というのは、当事者がいっぱい来るんです。薬がだんだん抜けてくると本当に頭がはっきりしてきて、自分たちがどう思っていたかを言う、言わせるようにしているんですけど、学校でこんなことされた、言われたって。そういうのを聞くと、ああ、そんな学校行かなくてよかったねって思う。そういうのが見えてくるから、明るい不登校をしようよって。当事者の声ってすごいなって思います」

かこ「精神医療に一度はまってしまうと、悪循環だったり蟻地獄だったりで、なかなか抜け出すのが難しくなる、薬がもうそういう薬ですから、そこへいく入口をふさぐ方が先、効果的ですよね。そういう思いも込めてこの本を書いたんです。そろそろ質問に移りたいと思います」