7月28日に始まった慎吾さんに対するECT、2クール目。16回のうち7回施行後の経過をさらに続ける。



7月30日看護記録

6時 目覚め不良。

9時 自分でトイレ歩行し、歩けず、転倒する(外傷なし)。疼痛のためなかなか動けず。

 全身の筋肉痛かなり強い様子。

 シーツ交換、タッチガード装着。


10時30分 ギャッジアップして、朝食摂取し始めるが、飲みこみにくさ、むせあり。


13時 オムツ内、便失禁あり。下剤便。

  昼食促すも、目覚めず。


16時 夕食セッティングすると、自分から食べようとするも、手づかみで、コップもしっかり持てず、寝具を汚染し、それをいじっている。

 眠気強く、ろれつも回らず、何を話しているのか聞きとれない。


20時 喘鳴強いため、四肢抑制し、Ns2人がかりで吸引する。






7月31日看護記録

6時 目覚め不良。

8時 尿意訴え、尿器当てようとするも、トイレでなければ出ないと言い、払いのけてしまう。

10時40分 ろれつ回らず、聞き取れない。


19時30分 筋肉痛のためか体にさわると怒り出し、攻撃的となる。眠っている。

20時30分 薬促すが拒否的。何とか促して飲むが、サイレース、ユーロジンだけ。

 おむつ装着、タッチガード装着



8月1日看護記録

6時 休憩室の付近をウロウロしている。



10時30分 610号室へ入室スムース

10時35分 Dr○○より、イソゾール+硫酸アトロピン施行される。

 ECT 100ボルト 3秒 3回 ⑧⑨⑩施行。

 3回ともクランプ良好。呼吸回復 27-42秒要す。

 1回終了後、歯肉出血少量あり。2,3回目はなし。1かい終了後、両下肢抑制。

 3回終了後四肢抑制する。



14時 声かけすると開眼する。ブツブツと話をするが、ろれつ回らず聞き取れず。

14時20分 昼食半介助にて。自分でも摂取しようとするが、右上腕の疼痛訴え、口元までなかなかはしを持っていけず。ぼーっとしながら摂取する。


20時20分「トイレはどこですか?」

 トイレ教えると、自分で行き、尿多量にあり。

22時 タッチガード装着





8月2日看護記録

6時 目覚め不良。

7時 声かけには目覚めるが、起きてこず。朝食、トイレ促すが、まったく起きようとしない。


9時15分 トイレに歩いていくが、ふらつき強い。


13時 ベッドの柵乗り越え、休憩室に出てきているが、転倒した様子なし。ウロウロしており、しばらくしてからベッドのところに横になって寝ている。外傷なし。


「今は2月頃かな」

記銘力、障害あり。



14時27分 イソゾール+硫酸アトロピン Dr○○

 ECT 100Ⅴ 3秒 3回。3回ともクランプ良好。

 呼吸回復に25-42秒かかる。

チアノーゼあるが呼吸回復とともに消失する。

 運動不安は見られず。喘鳴あり。舌根沈下気味で、鼾様の呼吸みられる。

 吸引にて、黄色過食の水用痰あり。口内出血、歯肉出血はなし。


15時15分 自室にベッドのまま移床。タッチガード装着。


18時 ぐっすり眠っている。声かけにも目覚めない。

19時56分 夕食摂取せず。飲水もしない。


21時 上肢抑制。抑制時抵抗せず。

 おつむ装着。










同日医師の記録には、前日に肩痛を訴えていたため、「XP撮影。変型性関節炎。年齢相応とのこと」。そして、ECT後の記録には、「ECT後ずっと寝ている。食事、飲水していない。5%Glc 500ml点滴」とある。



8月3日看護記録

4時 ブツブツ何か言っている。

6時「今は秋です」という。腹満。腹鳴、聴取できず。

7時 ふらつき強く危険なため、タッチガード装着。

 ブツブツ言っているが、静かに臥床している。



10時 トイレにて自尿促すも、抵抗強く、排尿せずに610号室入室。

10時47分 イソゾール+硫酸アトロピン、Dr○○

 ECT 100V、3秒、3回。3回ともクランプ良好。

 R回復 30-42秒。運動不安みられず。喘鳴あり。吸引行う。

 ECT終了後、おむつ装着し、両下肢のみ抑制する。



12時30分 右肩痛かなりあり、体動できずに静かに臥床。

14時 起き上がる。車イスに移動促すも、疼痛強く、床に座り込む。

 610号室で昼食、5割摂取。内服する。

 釣りをしているような動作あり。幻覚妄想か



15時20分 オムツ内失禁あり。


17時45分 車イスにのって休憩室で過ごすが、トロトロした状態で、イスからずり落ちそうにしている。眠気も強く、食事も食べられないため、Ns、Dr4人がかりで介助し臥床させる。移動時、痛いと怒るが目は開かない。



21時 呼名して尿意尋ねるが反応なく、おむつを見ると、何するんだと抵抗して怒るが、そのまま入眠してしまう。







同日の医師の記録

ECT5日目 呂律回らず、何を言っているのか判然としない。右肩が痛い、と。


ECT後、昼食、主食5 副食4 摂取。飲水もしているが、17時45分夕食のため休憩室に車イスで連れていくも、ウトウトしており、ベッドに寝かせると、空をつかむ動作あり。せん妄? 

トロペロン、バルネチール、ロドピン中止


 


この日で、電気けいれんショック療法(ECT)の2クール目(16回)は一応終了した。(1クール目は13回。つまり慎吾さんは、計29回のECTを受けたことになる。)

 意識もはっきりせず、オムツをつけられ、食事もとれない状態であるにもかかわらず、ECTは予定通りすべて行われているのである。

車イスに乗っている人間である。医師や看護記録にもあるように、「せん妄?」「幻覚妄想」的になっている(もちろん、病気の症状ではなく、薬やECTの副作用である)患者に対してである。

 いったい何のための「治療」なのか? 何のためのECTなのか? 患者のどのような症状を抑えるための行為なのか? 

 あまりのやり方に、記録をこうして書き写していても、何やら胸のあたりがざわざわし、吐き気を催す。これが「医療」か?



 ECT終了後の8月4日の看護記録。

「何もないところをつかんだりする。表情、ぼおっとしている。ずっと休憩室で過ごす。

食事は飲みこみにくさあり。発語あるも不明瞭。空をつかむ動作あり。

 ぼおっとしているが、入眠することはない。易怒的になることはない。

車イスにて休憩室へ。食事介助、5分の2摂取。

休憩室で車イスから床に崩れ落ちていることあり。外見上異常なし。乗車時、疼痛訴え、Nsの手を振り払おうとすることあり。

Ns2人がかりで臥床させる。自分でも動こうとするが体がついていかない様子。タッチガード装着。

ブツブツ言ったり、シーツをいじったりする。発語不明瞭。」



 その後も慎吾さんは同様の状態が続くことになる。

                                  (つづく)