離脱症状に今も苦しむD子さんの体験談を掲載します。現在進行形の話であり、私はこれほど苦しむD子さんに対して具体的なことが何もできない自分の無力を思い知らされるだけです。

 それにしても、なんという安易な処方の仕方か、と思います。

 結局、離脱症状に苦しむ人は、さらなる薬を飲まされるか、別の薬に置き換えられるか……そして、患者は、さらに上塗りされた薬の副作用・離脱症状までも経験しなければならないのです。

 多剤大量処方によって症状は複雑になり、減薬に取り組もうにも、どこから手をつけていいのかさえわからなくなる。しかも医師は、減薬、断薬におけるいかなる知識も技術ももっておらず、D子さんのケースでは「自分の判断で」と差し戻されてしまっています。

 患者は孤立し、無援のなか、生命の危険ととなり合せに、ひたすらその苦痛に耐えるしかない……。薬害によって望みもしない闘いを余儀なくされ、貴重な人生の時間を奪われて、それでも、どこにも、誰にも訴えることができずにいることの不条理、理不尽さを思うと、何の手当もできない私は、せめて文字にすることで、その現実を伝えたいと思います。



眠れないの一言で、薬を処方され

D子さんは、3年前、ちょっとしたことから内科を受診し、そこでデパス(0・5ミリ)とマイスリー(10ミリ)を処方されました。しかし、効果があったのは最初の1日か2日だけ。それ以降はどんどん睡眠時間が短くなり、2週間でまったく眠れない状態になってしまいました。

内科に行ったのは、仕事のことでちょっとした悩みがあり、誰かに話を聞いてもらいたかったからだといいます。たまたま知人から、何でも相談に乗ってくれる医者がいると聞き、とりあえず行ってみようかという軽い気持ちで受診しました。

ところが、行ってみるとその医師に人の話を聞くような雰囲気は一切なく、言葉に窮したD子さんは、治療を終えたばかり歯が痛かったこともあり、「あまりよく眠れない」と言ってしまったのです。

それまで、眠れないことなどほとんどなく、たまたまそのとき、歯が痛かったので眠れなかっただけなのですが、結局、デパスとマイスリーを処方され、眠れるどころか2週間で完全な不眠症患者になっていました。

医師にそれを告げると、薬の種類と量が増やされました。しばらくすると手足がしびれて、過呼吸発作を起こし、転倒して救急車で運ばれたこともあるといいます。

仕方なく他の内科を受診し、すると今度はリーゼ(10ミリ)とレンドルミン(0.5ミリ)が処方されました。それもまたすぐに耐性がついて、1週間で眠れなくなり、あちこち具合も悪くなって、それを医師に告げると「うちでは無理だ」と精神科を紹介されました。


そして、精神科では、レキソタンドグマチールサイレース(ロプヒノール)、サイレースは2ミリが出て、それで最初の1日だけ8時間ほど眠れましたが、翌日からは6時間、日に日に眠れる時間が短くなっていき、10日後には4時間くらいになっていました。

(以下、D子さんからのメールです)



「それで、あるとき医師から、飲んでいる薬を全て切れという指示が出て、その通りにしました。まさに地獄でした。すさまじい離脱症状と発狂を起こして、17日間ほとんど眠れず食事もできず、アクエリアスみたいなものしか飲めず、体重も10キロ以上やせて、皮膚もたるんで、骨が出てきて、便秘になり、ひどい状態となりました。

結局また病院に行く羽目になり、せっかく断薬したのに、またしても睡眠薬と安定剤が処方されました

その後、半年くらいすると、薬に耐性がつき、このままだとひどい副作用と離脱症状を抱えたまま、どうにもならない状態だと思い、とにかく眠れなくても徐々に減薬していき、今度は自分の判断で断薬に踏み切りました。

このときも地獄でしたが、9日めにやっとうっすらと数時間眠ることができました。

しかし、その後一向に深い眠りはやって来ず、頭痛や離脱症状、発狂は悪化していきました。自宅でのた打ち回る私をみて、母が根をあげてしまい、結局また別の医師のところに行って、「このひどい症状をなんとかしてください」と訴えたところ、わけのわからない病名(チックと言われました)をつけられて、「チックにはセレネースが効く」と言われて、セレネースを飲み始めました。

しかし、一向に効かず(当然ですが)、それどころか副作用ばかり出るので、すぐ飲むのをやめました。

そして、私のこの症状は眠ることさえできれば治ると判断したその医師は「ベンゾは安全だ」と主張して、ベンゾを処方しようとしたのです。こちらはベンゾで悪くなったのに、ベンゾで治すことなどできるのですか、と問いただしたところ、返事はうやむやにされたまま、薬を処方してきました。何度もそのことは問いただしたのですが、煙に巻かれたようでした。

それで結局、またしてベンゾを飲み、やはりあっというまに耐性がついて効かなくなってきたので、再び問い直したところ、「薬は切れる、効き目があるところまであげてもベンゾは安心だ、安全だ、薬は切れる」などと大嘘を平気でついていました。

耐性がつき、量がどんどん増えていき、これでは延々と増える一方じゃないかと思い、その医者のところに行くのはやめました。



ベンゾ断薬のため入院したが……

しかし一度増えた薬を減らすのは容易ではなく、それでも苦しみながら、少しずつ薬を減らしたのですが、ひどい離脱症状も出るし、これ以上減らすのは家では難しいと思い、いろいろ病院をあたった挙句、依存を認める医師がいたので、ベンゾ断薬前提で入院をしました。

当初考えていたのは薬を少しずつ減らしていき、発狂を起こしても、近所に気兼ねしない環境なのかと思ったら、今度の医者はベンゾの代わりに、いろいろメジャートランキライザーを中心に、コントミンやらセロクエルジプレキサ――それでも眠れないとベゲタミンといろいろ出してきました。

「どうしてベゲタミンなのか」と尋ねると、「これはベンゾではないから」と言う屁理屈が返ってきました。ベゲタミンはバルビツールとメジャーの合剤だし、しかもバルビも依存耐性がつきやすい薬です。

それに、看護師にはシフトがあって、自分のときに夜中に暴れたり発狂されたくないのでしょう。薬を飲むように強要されました。しかし、それではなんのために、独房のような部屋に入れられて断薬という形だけのことをしたのかわかりません。これでは入院した意味がない、と帰ってきてしまいました。

これではやっぱり自分で薬を切るしかない、そしてひどい離脱症状や発狂を起こしても耐えるしかないと思いましたが、ひどい発作時に母が根をあげたり、近所に通報でもされ、それこそ救急車でも来たら、アホな精神科医に統合失調症とでもなんとでも病名をつけられて、メジャーをバンバン打たれるのかおちでしょう。そして当然治らず、そのうちお陀仏になるかもしれません。

(2へつづく)