前々回のエントリのコメントに有意義な情報がありましたので、ここで改めて考えてみたいと思う。
このブログにこれまで寄せられた報告では、そのほとんどが病状の改善を見ない患者に対する多剤併用処方の結果の被害である。
しかし、アリスパパさんのコメントによると、製薬会社の出す医薬品添付情報には、2剤についての併用注意の記載はあるが、多剤の治験などしていない。よって、製薬会社が薬を販売するに際しては、多剤併用は最初から想定していないということだ。
にもかかわらず、多剤併用は日本の精神医療界では、それが当然の成り行きのごとく、蔓延している。
多剤併用の怖さは、薬効が足し算ではなくなるところである。よく「上乗せ」というが、結果は掛け算による「上乗せ」だ。
なぜ掛け算になるか。
①薬は肝臓酵素で分解されるが、併用された薬が同じ酵素で分解されるものなら、その分解能力を超えてしまい、血中濃度は一気に上がる。
②抗うつ薬SSRIは、肝薬物代謝酵素を阻害する作用があるため、分解されないまま体内に取り込まれる。
そのあたりのことは、アリスパパさんが改めてブログで詳しく書いているので(薬の名前も挙げているので)ぜひ参考にしてください。http://ameblo.jp/sting-n/entry-10765250695.html
また、同じくブログに紹介されていますが、次のHPも参考になると思います。
http://genoscan.client.jp/index.html
パキシルについては、パキシルは肝臓酵素CYP2D6で代謝されて、CYP2D6を阻害すると記載されているが、デプロメールの添付文書には、次の記述があった。
「本剤の代謝には肝薬物代謝酵素CYP2D6が関与していると考えられている。また、本剤は肝薬物代謝酵素のうちCYP1A2、CYP3A4、CYP2D6、CYP2C19を阻害し、特にCYP1A2の阻害作用は強いと考えられている。」
これらは誰でも、その気になって調べれば知ることのできる事実である。
ということは、添付文書にこう明記している製薬会社は一応、(逃げの)手を打っているというわけだ。
そして知らぬは医師ばかり。
もし、向精神薬が薬害として裁判の場に引きずり出されたなら、自らの臨床経験や適当なブレンド感覚でさまざまに薬を組み合わせて処方してきた医師が、まずはその責任を負うことになる。それをわかって、医師たちは薬を処方しているのだろうか。製薬会社に踊らされ、MRの言葉を信じ、ただそれを根拠に処方を続け、最後に梯子を外されるのは、自分たちである、ということがわかっているのだろうか。製薬会社は決して医師の味方ではない、ということが。
一般の方からの医薬品の副作用報告制度が整った
多剤併用になれば、当然副作用もその分厳しいものになる。
そして、これまでは医療関係者からの報告は受け付けていたが、患者サイドからの副作用報告の受け皿がなかった。
が、pmda(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の昨日(1月11日)付の記事によると、一般の人からの副作用報告を受け付けるシステムが整ったとある。
リンク先はhttp://rx.di-research.jp/
試しに、中をのぞいてみたが、複数の薬剤についての副作用も報告できるようになっている。
ただ、向精神薬の場合、単剤での問題ももちろんあるが、すでに書いてきたように、多剤併用、つまり根本の問題は医師の処方にあるので、このシステムがどこまでそういったことを吸い上げることができるか未知数ではある。
そして、このシステムが単に「やってます」的な、アリバイ作りに終わるのではなく、真の意味で機能することを願わずにはいられない。
が、とにもかくにも、こうして副作用を患者サイドから報告できる場ができたというのは意義あることであると思う。
そして、向精神薬についての副作用報告が山のように届けられたら(山のように存在するのは事実である)、必ずや風向きは変わるはずだ。
ぜひ、皆さんもこのシステムを利用して、体験された副作用について、どんどん報告をしてほしいと思います。
ちなみに、欧州議会では、2010年9月22日、医薬品安全監視の枠組みを強化する目的で提案されたEU立法の採決を行い、圧倒的多数で可決したとのニュースもある。http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=312
それによると、医薬品安全監視法案は、欧州委員会によって作成された3つの部分からなる医薬品一括法案を要素としており、製造販売後の調査の対象となった医薬品には欧州全体で統一した目印をつけることを提案している。また、法案の全体的な目的は、EUの医薬品安全監視ネットワークを強化し、副作用報告をより効果的に確保するようにすることである。
EUのこうした動きが、日本政府の鈍感な対応にさらに大きな刺激を与えるきっかけになればいいのだが。