新年あけましておめでとうございます。

 今年はこれまで通り向精神薬について考えるのはもちろんですが、薬物治療における薬漬け問題のそもそもの根っこと私が考えている精神科病院について、もう少し掘り下げてみようと思っています。

 そこでまず、昨年末にブログにコメント入れてくださった「りんごさん」という方から情報をいただきました。

 まず、りんごさんについてですが、コメントによると――、

夫が借金を苦に睡眠薬で自殺未遂をしたのをきっかけに、今度は彼女自身うつっぽくなって精神科に通院。診断は軽いうつということでしたが、そこでは1ヶ月分簡単に処方してくれるので、軽い気持ちで半年間飲み続けたところ、アカシジアが出始めました。

その後、病院を変わりアカシジアは治ったものの、りんごさんはまたアカシジアが出てしまうのではとの思いから薬を止めてはいけないと思ったそうです。それでセロクエル、デパスに始まり、「飴玉のように処方される薬」を次から次へと飲むようになりました。

そのうちに薬をきらすと眠れなくなり、睡眠薬まで服用するようになって1年半後、症状はさらに悪化。窒息感、足の震え、目の痙攣が起こったため、自分から入院をさせてほしいと言ってしまったのが、さらなる薬漬けへと道を開く結果になってしまいました。

退院はしたものの、廃人同然。しかし、薬の影響とは誰にもわかってもらえず、必死で断薬して1年過ぎた今も、「身体はボロボロ、生き地獄のまま死んで行くのかと思うと悔しくてたまりません」と言います。今思えば医師からは、薬の副作用だから、副作用止めを飲めば治ると簡単に言われ、悪化すればカルテには、うつからパニック障害と診断名も簡単に変えられていたと言います。


反抗的な態度の患者は即入院

そして、りんごさんが退院後、同病院に通院中のことですが、次のような場面にでくわしたそうです。

最後に通院した去年(一昨年)の秋、もう主治医が信頼できなくなった事をぶちまけてやろうと診察の順番を待っていると、主治医の診察室から「嘘をつくなー! この病院を訴えてやる」と大声で叫び出した男性を看護師が押さえつけ、閉鎖病棟に運ばれて行くのを見ました。男性は「入院したら殺される。入院だけは嫌だ、誰か助けて下さい」と携帯電話を握りしめ、涙を浮かべていました。男の看護師は「死なない~死なない~」と笑いながら男性を閉鎖病棟に運んで行きました。

男性は自分が薬漬けである事を 、携帯のネットで検索した事を主治医に訴えたのでしょう。男性も私と同じ被害者だとすぐにわかりましたが、私は救うことができませんでした。救おうとすれば私もまた閉鎖病棟いきになっていたと思います。こんな事が現実に起こってしまった恐ろしさ。今思い出しても身体が震えます。」


気分障害で入院した患者は?

 こんなふうにして閉鎖病棟に入れられた患者がそのあとどのように扱われるか、想像に難くありません。

 これまでも精神科病院に入院したため、りんごさんのように薬漬けにされ病状がさらに悪化、あるいは、そのあまりに過酷な体験のためPTSDなどさらなる病気を抱える結果となってしまったなど話がいくつもありました。

 少し前までは精神科病院への入院というと、いわゆる統合失調症の患者さんがほとんどだったように思いますが、最近では、これまで寄せられた報告からもわかるように、うつや不眠から受診し、その後病状が悪化したために入院という道をたどる人が多いようです。

 病状の悪化といっても、それは薬剤による悪化で、よく医師が言うように「もともとの疾患が悪化した」ためでは決してありません。入院時には統合失調症の診断がついていても、それは薬剤のせいで統合失調症のような状態を呈しているにすぎないのです。

 一方、精神科病院というところは、もともとが当時の言い方をすれば分裂病患者を「それなりに扱う」という抜きがたい「伝統」を保持しているところです。そして、そうした思想の根本には、混乱した患者の凶暴性を何とか抑え込むという目的があるわけですが、同じ統合失調症とはいっても、症状はさまざま、しかも凶暴性を発揮する人はほんのわずかの、限られた患者にすぎません(これは実際入院され、多くの統合失調症の方を目の当たりにした人の意見です)。

 そのほんのわずかな人を鎮静させる目的の「治療」を、統合失調症の患者さんすべてに施し、さらにはもともとは気分障害だった入院患者まで同様に扱うところに大きな問題があります。精神科病院に入院して生じる問題のほとんどは、ここから発生しています。(もちろん、わずかな人を鎮静させる目的のその「治療」にこそ問題があるわけですが)。そこにはやはり何らかの線引は必要であると感じます。


精神医学は治せない

 精神医学はこれまでのところ、分裂病、統合失調症を治すことはできていません。もともと「治す」という思想のない分野なのです。

 うつ病についても同じです。精神医学はうつ病を治すことはできません。

だから、精神科医は「治癒」という言葉を使いません。そのかわり「寛解」という言葉を好みます。ある精神科医によると、「寛解」とは薬を飲み続けて病状がある程度安定している状態のことを言うのだそうです。一方「治癒」は薬を止めても、病状が発現しない状態のことです。

 つまり、精神医学は最初から「薬漬け」なのです。治せないのです。

 治せないから、最初から治そうとしないのかもしれません。よくて「寛解」、つまり薬漬けで「抑える」だけなのです。それが精神科病院の患者を扱ううえでの「伝統」であり、精神科「治療」の本当に姿なのだと思います。

 そうしたドグマに毒された世界にぶち込まれたら、どうなるか。統合失調症もうつ病も睡眠障害も躁うつ病もパニック障害も、ドグマに毒された医師にとってはみんな同じなのかもしれません。

 そして病院やクリニックの「経営」というもう一つ別の「伝統」も根強くあります。ドグマと経営思想はうまい具合にぴたりと重なっているのです。

そんな腐った根っこから派生している街角クリニックにしたところで、同じです。そこで安易に行われている乱処方の結果、精神科病院への入院患者はますます増えるはずです。そして、患者はクリニック(通院)と病院(入院)のあいだを行ったり来たりするのです。

大元の、腐った根っこである精神科病院の実態を明るみに出すことは、だから、意義のあることだと思うのです。精神科病院とはいったいどういうところなのか。そこでいったい何が行われているのか。

 昨年末、ある方と話す機会がありました。入院歴を持ち、現在は離脱症状に苦しんでおられるのですが――、

「人生を狂わされ、今も地獄のような苦しみにのたうちまわっている。狂った日本の精神医療。せめて病院の一つも潰さずにはおくものか」

潰した方がいい病院、潰れて当然の病院は、日本にどれくらいあるでしょうか。