今日から自殺予防週間が始まった。それに伴って、自殺やうつ病の対策を検討する厚生労働省のプロジェクトチームが明らかにしたのは「向精神薬の過剰処方防止対策」である。

これについては日を改めて考えてみたいが、そんなわけで、厚生労働省のホームページをいろいろ調べていたら、9月10日(今日)の欄に「心の不調に気づき、治療や生活を支援するウェブサイト開設」というのを見つけた。それによると、

「9月10日からの自殺予防週間にあわせ、心の不調に気付いた時の対処法などを紹介する「みんなのメンタルヘルス総合サイト」と若い世代向けの「こころもメンテしよう」のウェブサイトを、厚生労働省ホームページ内に開設しました。」

 とあり、

「こころもメンテしよう~10代・20代のメンタルサポートサイト」

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth

10代・20代とそれを取り巻く方々(家族・教育職)を対象に、本人や周囲が心の不調に気付いたときにどうするかなどを分かりやすく紹介する若者向けサイト」だそうである。



 内容を見てみた。まずタイトルにあるのがこうだ。

「だるい、夜眠れない、朝起きられない……カラダの調子が悪いのは、ストレスのせいかもしれない。だからこころもメンテしよう

そして、

「こころのSOSサイン イライラ落ち込みが続いたら……Click」

 というわけだ。さっそく、Click。

「10代にもある『こころの病気』」

「こころの病気」は10代でも決して珍しいものではありません。たとえば、親しい人が亡くなってショックを受けたときなどには、気分が落ち込んで何もする気がしなくなる「うつ病 」になることがあります。

だからといって、あわてなくても大丈夫。病気の始まりかもしれない「SOSサイン」に早く気づいて、こころの専門家 にメンテを手伝ってもらえば、ちゃんと元の自分に戻ることができるからです。」

もちろん青字の部分をクリックすれば、その説明があり、こころの専門家をクリックすると、結局こうである。


「こころを専門に診るのは精神科」

「精神科では、初めて受診した人のカウンセリング に特に時間をかけるので、予約制にしているところが多くなっています。突然たずねていくと、長時間待たされることになりかねないので、事前に電話で予約制かどうかを確認しましょう。」

 カウンセリングに特に時間をかける……って本当ですか?

 そして、

「医師は、あなたの話に真剣に耳を傾け、問題を整理して、解決の道筋を探しだすサポートをしてくれます。あなたの考え方が間違っていると批判したり、「こうしたほうがいい」などと押しつけることは決してありません。主役はあくまでもあなた。あなたが自分の力で立ち直っていくきっかけづくりを手伝い、そして、それがうまく進むようにサポートしてくれるのがカウンセリングなのです。」

 ということだ。


 そして、結局、出てくるクスリの話。



「クリニックや病院ではこのほか、必要に応じて薬も処方されます。こころの病気でよく使われるのは、抗うつ薬と抗不安薬。抗うつ薬は気分の落ち込みをやわらげて、睡眠リズムを整え、よく眠れるようにする薬。のんですぐに落ち込んだ気分がハイになるわけではなく、ごくゆっくりと効いてくる薬です。

一方、抗不安薬は、不安や緊張が強すぎて、生活がままならなくなっている場合に出される薬。抗うつ薬に比べると比較的効き目が早く、のんですぐに気持ちが落ち着くという人もいます。どちらも種類がとても多いので、処方されたら、薬の名前と効果をきちんとメモしておきましょう。」


精神医療の真実  聞かせてください、あなたの体験 




このHPをみていて思い出したのが、今年の2月出版された「こころの病気がわかる絵本」である(↑)


「あさ おきられないニワトリ」(うつ病)とか、「さかながこわいクジラ」(社交不安障害)とか、「そらみみがきこえたひ」(統合失調症)とか……(このHPにも、ちょうどこれに当てはまるように「気分が落ち込む」「不安でたまらない」「自分の中から声が聞こえる」という項目がある。)

「小学生から読める絵本とわかりやすい解説で、○○○(病名)の早期発見、早期治療のきっかけを提案する精神科医による画期的な本! こころの病気は、だれにでも起こりうる病気なのです。」と絵本の帯にある。

作者は宮田雄吾さん。長崎の大村協立病院副院長(精神科医)だ。

この病院のHPを開いてみると、宮田医師は精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、そしてコンサータ錠登録医師である。

絵本の内容はどれもみな、それぞれの動物たちによってこころの病気になった場合の症状が描かれ、困った挙げ句、最後におっとり刀の精神科医が登場し、薬を処方して、すっかり病気がよくなってめでたしめでたし、という作りである。




これは「厚生労働科学研究費補助金」による「こころの健康科学研究事業」「思春期精神病理の疫学と精神疾患の早期介入方策に関する研究」という長い長い名前の、要は税金を使っての研究活動の一つだが、言ってみれば、手を変え品を変え、優しい素振りを見せながら「こころの病気になったら薬があるから大丈夫」と教えている絵本である。「赤ずきんちゃん」の中の狼みたいなものかもしれない。



それと同じようなことを、よりにもよって自殺予防週間の始まった今日、厚生労働省がネットの世界でも始めるとは……。

これでいったい何を「啓蒙」したいのだろう。

そもそも「こころの専門家は精神科医」って、いったい誰が決めたのか。

現在の精神科医は「こころ」の専門家では決してない。専門家という言葉をどうしても使いたければ、それは「脳」の専門家というべきだろう。脳内モノアミン仮説だけで薬を処方しているという意味において。専門家という言葉を使うのもはばかられるが、少なくとも、「こころ」の専門家などでは決してないはずだ。




昨日のブログにコメントが入ったので、コメント欄にとどめておくより、ここで紹介したいと思います。




7 ■はじめまして

私も、精神科医と多剤大量処方の被害者です。

薬を止めて約4年経ちますが、元々あった感覚はなかなか元には戻りません。

体もボロボロですし、脳の回転が完全におかしくなっています。

本当に絶望的な毎日を送っています。

薬を止められたからといって、全て元通り、なんて甘い話じゃないんですよね。

服薬期間は丸5年。未成年の、ほんのまだ子供でした

飲んでいた薬の種類は10種類以上で、普通に指示通りに飲んで1日20錠

異常としか言いようがありません。

もう、常識と非常識の区別さえつきません。

暴れてもないのに数日間ベッドに拘束されたあの記憶は、一生心の傷として残るでしょう。

そして何よりも悲しいのが、この被害はなかなか理解され難い事。

この事を知って、弱みに付け込んで来る輩も沢山居ます。

ただでさえ酷い被害に遭っているのに、2次被害、3次被害と続くように出来ているんです。

被害の度合いは、個人差があるのかもしれません。

私の場合は子供の頃から薬漬けにされていたので、世の中の事を全く知りません。

時が、薬を飲まされた所で完全に止まってしまっています

健康的に、時の流れを感じる事が出来ないのです。

ずーっとあの頃に立ち止まったまま。

周りに状況を理解して支えてくれる人が居れば、少しは回復に繋がるのかもしれません。

ですが、そういった人が誰も居ない人は、孤独な生き地獄を味わい続ける事になります。

私はもう、誰も、誰も信用する事が出来ません。

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こういう被害の話を聞くと、絵本を作って、得意げに笑って新聞社の取材を受けていた精神科医の顔がちらついて、怒りがさらに湧いてくる。

実際絵本を作った精神科医の後ろには(研究事業を推し進める)専門家と言われる偉い先生方の力が働いているのだろう。その人たちは、このような声を聞いて、いったい何を思うのだろうか。どう弁明するのだろう。「それはもともとのあなたの疾患です」とでも言うつもりだろうか。