全国自死遺族連絡会というのがある。代表は田中さんという60代の女性。彼女を訪ねに、今年の3月、私は仙台へ行った。

「薬をやめれば、病気がよくなる。冗談のようだけど、本当のことですよ」

 田中さんはそう言って笑っていた。

 自身、息子さんを精神科に通いながら自殺で亡くしている。

なぜ? 大きな疑問と精神科治療への不信感から、自死遺族の話を聞き続けて4年になる。今年の4月には、統計結果をもって政府に対し、自殺対策における要望書を提出した。

その資料から、いくつか抜粋させてもらう。

1、 乳がんの手術後不安を覚え、知人に勧められて精神科へ。軽い「うつ」と診断されたが、薬は増え続け、一年後、統合失調症と診断され、入院・退院の繰り返し。2年後、マンションから飛び降り(東京)。

2、 高校でいじめられ、不安になり心療内科へ。「うつ」と診断される。薬が増え続けて、思考力低下などが現れ、家の近くの橋から飛び降り。(3時半頃に自宅を出たと思われる)捜索願を出し、独自に家族も探し続けて2週間後に水死体を発見(宮城)。

3、 父親の自死を体験後、眠れない日が続き、精神科へ。薬が増え続け、1年後には1日に40錠飲むようになって、布団の中で亡くなっているのが発見される。しかし、検視も行われず、警察は自殺として処理(青森)。


 軽い不安や眠れないなどから軽い気持ちで精神科に行き、一言話すと1錠薬が増え、手足が震える症状がでると、手足の震えを抑える薬が処方される。精神科に行き、薬を飲めば治ると信じて薬を飲み続ける。最初は「軽いうつ」だったのが、年月とともに「重度のうつ」となり、さらには「統合失調症」「人格障害」など病名が増えていき、ついには通常の生活が困難となって自死に至る。そうしたケースが調査した自死者のうち7割を占めることがわかった。

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 7割という数字は、2006年7月から2010年3月の、1016人の自死遺族への聞き取り調査から出てきた数字である。精神科を受診したことのある人は1016人中701人で、69%である。

 1016人という分母は統計的にけっして小さい数字ではないはずだ。

だから、そこから導き出された数字のもつ意味も重い。

1016人の自殺した人のうち701人もの人が、治りたい、助かりたい、生きたい、と願いながら、最後の頼みと精神科を受診し、亡くなっているのである。

結局、精神科医は何もできなかったということだ。

いや、それどころか、ただ薬を処方し、漫然と量を増やし続けて、患者をめちゃめちゃにしてしまっただけである。死なずに済んだ命が、精神科医の処方する薬によって死んでしまった、といってもいいかもしれない。

 さらに調査結果はこう続いている。


 自宅マンションからの飛び降りは、この調査では72名、そして72名、すべての人が精神科の診療を受け、一回の服用が5~7錠、一日3回、ほかに頓服や寝る前の睡眠導入剤を飲んでいた。

 また、縊死、刃物、薬などの多くも精神科の受診率が高い。

 自宅、自宅周辺での自死は精神科の受診率が高い。

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自宅、あるは自宅周辺での自死、ということは、つまり衝動的な自殺を意味している。抗精神薬は衝動性を高め、人を衝動的に自殺に追いやる働きをする。


それなら、自殺と薬の因果関係を証明できるのか?

 精神科医のなかにはそう反論する人がいるだろう。

 確かに、科学的な証拠はないかもしれない。

 しかし、状況証拠はそろっている。

 「状況証拠を積み重ねていき,それが被告人以外の犯行に間違いないといえる合理的理由があれば有罪認定できる」

 最高裁でもこう言っている。