現在の精神科治療のいったい何が問題なのか?
 あらためて考えてみた。


 例えば、夜眠れなくなり、しかも気分の落ち込みが激しく、何もやる気が起きない。そんな状態で精神科(あるいは心療内科)を受診したとする。「うつは心の風邪」というキャッチフレーズのおかげで、精神科への敷居はかなり低くなっているから、受診に際してたいした抵抗はないはずだ。

 診察を待つ間、簡単な問診票に記入し、医師はおそらくは30分くらいの診察を行って、日常生活のあれこれを尋ねてくる(ほとんどがパソコンの画面を見ながらだが)。

患者が「眠れないんです」と言えば「眠れないんですね」といい、キーボードを押す指の動きが早くなる。(それが聞きたかったのだ、という感じで)。そして、
 「わけもなく不安になるんです」


「何をやっても楽しく感じられません」

「仕事もしたくない」

「家事もしたくない」

こういう言葉が精神科医は好きである。なぜなら、薬と結びつけやすいい症状だからだ。

そして、こうした自己申告がない場合は医師のほうから「不安を感じますか?」「家事はできていますか?」と誘導尋問してくるはずだ。

 そして、30分後、あなたはもう立派な「うつ病患者」として、医師からの処方を受けることになる。

 もちろん、副作用については「胃の調子が悪くなる程度です」くらいの説明しかされないだろう(医薬品添付文書に書かれている副作用を一つ一つ説明したら、あなただってとても飲む気になれないだろう)。

 良心的なところなら、まず抗うつ剤1種類と、抗不安薬、睡眠薬、それと胃薬が出される場合が多い。抗うつ剤はまずは最低量の1錠から。

しかし、そんな良心など微塵もないところなら、最初から複数の抗うつ剤を処方するし、抗不安薬や睡眠薬もいくつも重複して出すはずだ。

しかし、ここでは「ごく普通の」精神科クリニックの話をする。

だから、最初の処方は、一週間ほど様子を見ましょう、ということで8日分くらいだろう。

そして、一週間後。今度は30分も話を聞いてはもらえない。せいぜい10分。

「薬を飲んでどうですか?」

「胃の具合がおかしいです。まだよくなっているようには思えません」

「この薬は効き目がでるまでに時間がかかるんです」

「でも、吐き気がして、余計気分が落ち込むような気がします」

「もうちょっと頑張ってみてください」

 そして、同じ種類の抗うつ剤が、しかも今度は、例えば25㎎だったものが50㎎といった具合に倍増されて処方される。

 それでも効果が感じられなかったら、さらに増えるか、そうでなければ他の薬に切り替わるか、組み合わせての処方になるに違いない。医師には処方権があるから、あなたは文句が言えない。文句を言っても「もうちょっと頑張って」と言われては、頑張って飲むしかなくなる。


 悪質でもなんでもなく、これはごくごく一般的な精神科クリニックの例である。

 それでも、精神科に行けば、ほぼ100パーセント向精神薬が処方される。診察の際、インフォームドコンセント(説明と同意)などほとんどなく、「病気を治すため」決められた薬を決められたように飲むことを求められる。

 運が悪ければ、最初から薬屋が開けるほどの薬を処方されるはずだ。「薬理学上あり得ない」ほどの多剤大量処方。

 上記のようなクリニックにしたところで、病状に変化が現れない限り、結局は多剤大量処方になっていく可能性は大いにある。なぜなら、精神科医は薬物療法しか解決策を持っていないのだから。そして、真面目なうつ病患者であるあなたは言われた通り真面目に薬を飲み続ける。


 そして、どうなるのだろう?

 本当にうつが治っていくのだろうか?

 治る人もいるかもしれない(私は会ったことがない)。

 しかし、治らないのに、延々と薬を飲み続けている人のほうが多いのではないだろうか?

 飲んでいるのに治らない。それどころか事態はますます悪くなっている。それなら、薬を止めればいいではないか、と普通は思う。

 しかし、そう簡単に止められないのが向精神薬というものだ。依存、耐性、離脱症状・・・

 精神に働きかける薬を飲み続けていれば、精神に悪影響を及ぼすのは、他の薬のことを考えてもすぐにわかる。

 しかし、精神科医にはわからない。なぜ、わからないのだろう。わかっていて薬を処方し続けるのだろうか?(だったら犯罪に近い)。


 患者がどのような症状で受診し、それに対して医師がどのような診断を下し、どのような薬を処方したか。そして、以後どのように処方が変化していき、患者の経過はどうなっていったか。

 そういうデータはほとんどない。

 もし、そうした生のデータがたくさんあれば、いかに精神科というものが安易な診察を行っているか、そして、誘導尋問のような問診による安易な診断にもかかわらず、麻薬に近い向精神薬をいかに安易に乱発し、それによって病気を治すどころか病状の悪化を招いているか、そんな精神科治療の真実が明るみに出るはずである。