みすぼらしい身なりの僕は

両手いっぱいの花束を抱えて


街を歩いた


通り過ぎる人々は皆

怪訝な表情で僕を見た


恥ずかしいよりも

切ない気持ちになって


いつもより急ぎ足で

道を大股で歩いた


ゴミを選り分けて

稼いできた


服は1枚しか持ってない

靴は穴が空いている


そんな僕に気を止める人なんて

誰もいなかったし


いたとしても

慌てて目を逸らしていた


そんな僕に

「こんにちは」と挨拶してくれた彼女


いつもその道を通る

小柄な彼女


僕は食べるのを我慢して

いつもより長く働いて


両手いっぱいの花を買った


彼女に似合いそうな

パステル色の花束


振り向いて欲しいわけじゃなく

そもそもそんな自信なんてない


ただ彼女に笑って欲しがった

彼女の花のような笑顔が見たかった


彼女の通り道まで

小走りに急いで

彼女を待った


やっと彼女が遠くに見えた


僕は駆け寄り

花束を彼女に差し出した


彼女は…


顔色を変えながら

僕に叫んだ


「近寄らないで!」と…


近づきすぎては

いけない人だった


近づかなければ

挨拶くらいはしてくれたのに


些細な優しさを

垣間見れたかもしれない


(そうだよな…)

自分に言い聞かせ


花束を抱えて歩く帰り道

人の目線など気になることなく


重い足取りでゆっくりと歩いた


そして…

ゴミ山に花束を投げつけた


痩せて窪んだ目に映った花束の色は

ゴミの中に紛れて


ただただ色褪せて見えた


それから彼女が

通りすぎることはなかった


二度と…