こんにちは。
もものマークのクリニック 院長てしまです
私のチョコレート嚢胞治療関連記事、思いのほかたくさんの方に読んでいただけているようで
アラフィフの身体に鞭打って手術前夜のトイレ祭りに耐えたり腹に穴開けたりした甲斐があったというものです(違)
せっかくなので、ブログテーマに
【チョコレート嚢胞治療記録】
という項目を加え、まとめておくことにしました。
数年たって自分が色々振り返るのにも便利だし
見ず知らずのどこかの誰かの役に立つかもしれないし
私が手術を受けたのは先々週の火曜日。
腹腔鏡手術でお腹に開いた4つの穴にはそれぞれ傷を保護するテープが貼ってありましたが
こちら、退院後2日目くらいで早々に端から浮いてきてしまいました。
傷の周りがかゆくて、無意識にこすったりしてしまったのかもしれません。
退院前の診察の際、婦人科の外来看護師さんがパンフレットを参照しつつ
「傷のテープは自然に取れるのを待っていてくださいね。
テープが取れてから、もしきずあとの治りをより綺麗にとご希望なら
このパンフレットにあるようなシリコンシートで保護していただくのも良いようなので
参考になさってください。」
と丁寧に説明してくださるのを聞きながら
えっと、一応形成外科医なのでそのあたりはダイジョウブです
と内心思いつつも、親切な看護師さんの言葉を遮ることができなかった猫かぶりは私です
そんなこんなで看護師さんから頂戴した某大学形成外科医師の監修したパンフレット、
内容は、形成外科医が勧める術後のきずあとケアとしては大変一般的なものでした。
綺麗に切開縫合された皮膚は、術後1週間~2週間ほどで傷がくっついて「きずあと」(専門用語だと「瘢痕」)の状態になります。
このきずあと、くっついた直後はたいてい幅1ミリ以下のほそーい状態です。
しかし、日常生活を送る上で、動かない人はいません。
動けば、当然傷の周囲にも大なり小なり負荷がかかります。
引っ張られたり、圧迫されたり、こすられたり。
きずあとの組織は、健常部の皮膚と比べると強さやしなやかさに欠けるので
周囲の皮膚に引っ張られてきずあとの幅が広がっていったり、きずあとの組織が盛り上がってきたりすることが珍しくありません。
幅が広がり、盛り上がって赤く硬くなったきずあとのことを『肥厚性瘢痕』と呼び
瘢痕組織が本来のきずあとの範囲を超え、さらにモリモリと赤く硬く強く隆起して、痛みやかゆみを伴うようになってくると『ケロイド』と呼ばれます。
きずあとが、肥厚性瘢痕やケロイドにならずに綺麗に治るかどうかは
縫合した医者の技量のよるところもゼロではありませんが
私自身の臨床経験からすると
- どのような傷を負ったか
- どこに傷を負ったか
- 患者さん自身の肌が、傷の治りの良いタイプかどうか
の3つの要素に非常に大きく影響されると感じています。
ですから、自分のクリニックで治療している患者さんには、これらの要因を踏まえた上で
必要度の高い患者さんには重点的に
そうでもない患者さんにはそれなりに
緩急つけて説明するようにしています。
ただし、説明するときにもう一つ大事な要素があります。
それが
- その患者さんがどれくらいきずあとのことを気にしているかどうか
このポイントをしっかり確認しないと
その患者さんのニーズに合った説明にならない場合が多々なのです。
きずあとのことをあまり気にしていない人に、滔々とケアについて説明しても、まあ実践はしないでしょうし
それを見た医者が「せっかく説明したのになぜやらぬ!?」と怒るのはおせっかいの筋違い。
逆に、客観的に見て明らかに問題なさそうな傷だから、簡単な説明でいいでしょ、と判断してサラッと流しても
心配で仕方のない患者さんからしたら不安しか残らないわけで。
結果、ネットの不必要な情報に乗せられて要らん事してトラブって、困って受診したときに
それを聞いた医者が「なんでそんなおかしなモンに手を出した!?」と呆れるのは、ちょっと違う気がする。
患者さんの話を聞いて、良い落としどころを見つけて、実行可能な方法を勧める
という、簡単に見えて意外と難しいことを、果たして私もどれくらい適切にできているのか、正直自信はありませんが
限られた診療時間の中で、患者さんにとっての「いい按配」を提案できるようにしたいなとはいつも思っています。
さてさて、対患者さんのきずあとについてはそんな感じに配慮している私ですが
対自分のハラとなると「割とどうでもいい」というのが正直なところ。
しかしながら
- 腹腔鏡のきずあとがある下腹部はケロイドの好発部位
- 実は過去にBCGの跡が長いこと肥厚性瘢痕でかゆかったり、虫刺されの跡がこじれて痒疹結節になったりしたことがある
という2点を考慮すると、客観的に見て『きずあとがこじれるリスクあり』と判断しておくのが無難です。
形成外科医が自分のハラにケロイドこさえるのもカッコ悪いので、さしあたりこちらのシリコンゲルシートで
瘢痕部分の保護&圧迫を遂行しています。
入浴時には剥がしてきずあととシートを石鹸で洗っています。
手間は少々かかるのと、厚みがあって下着の上げ下ろしでひっかっかるのはやや難ですが
かゆくなりやすい肌質の自分にとって、毎日サッパリ洗い流せるのは魅力的。
厚みは3mmくらい
シリコン製の保護&圧迫用品では、ニチバンのアトファインシリーズも有名です。
こちらは、一度貼ったら5~7日おきに新しいものに貼り替えるタイプ。
薄くて目立ちません。
ただ、蒸し暑くなる今の時期に、数日継続して貼り続けられる自信が私には無かった
肌が強いかたや、涼しい季節には良いかもしれません。
毎日張り替えるのがめんどくさいひとにもおすすめかも(笑)
シリコンテープで一番コスパが良いのは、自分でカットして貼るタイプのこちら。
クリニックで販売しているのもこの3M製です。
肌が弱い人がやけどの保護剤などを貼るときにも重宝ですし、
すね毛にくっついても痛くないのがひそかに男性に好評。
色はなぜかこの水色一色なので、見える部位のきずあとを長期間保護するにはやや不向きかな。
世の中、きずあとを保護する材料にもいろいろあります。
そして、きずあとケアは数か月間続ける必要がある、ちょいとめんどくさいタスクです。
きずあとの部位、ご本人の肌質、コスパを考慮して一番合ったものを選んでくださいね。
それが、継続への一歩かと