こんにちは。
もものマークのクリニック 院長てしまです
前回記事の続きです。
術後の主治医の説明によると
私の卵巣嚢腫は子宮内膜症に由来するチョコレート嚢胞
その、おおもとの原因である子宮内膜症の程度としては、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)が内膜症の炎症により完全閉塞を起こしているため
内膜症進行度最重症のステージⅣとのことでした。
画像は日本産婦人科学会HPより引用
https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/no102_1_table2.jpg
チョコレート嚢胞がある時点でステージⅢに分類され、重症型なのは確定なのですが
まさか卵巣以外にも内膜症性の病変がバラけていたとは露ほども思わず、入院中に話を聞いた時は
ポカーン( ゚д゚)
という反応しかできませんでした。
自分のハラの中がまさかそんなエライことになっていたとは......
ただ、退院して落ち着いて考えてみると、色々腑に落ちない点が多い。
そもそも、子宮内膜症って、ひどい月経痛や出血過多に悩まされるのが一般的では無かったっけ?
少なくともここ2、3年の間は、月経痛はあっても期間中の1日くらいで、鎮痛剤も数か月に1回飲むかどうか
経血量も、貧血になるほどとか、昼でも夜用の生理用品が手放せないなどの困る事態に陥ることも皆無。
それでも、こんな重症度になるまで気が付かないものなの???
しかし、時間はたっぷりある入院期間、ここ2、3年だけではなくもう少し前に遡って我が月経人生(なんやそれ)を振り返ってみて、ふと思い出したことがありました。
あれはクリニックを開業して数年後だから、おそらく今から7年ほど前。
生理中に用を足すと
「ちょっと待ってこれ骨盤底ごと外れるんちゃうの」
くらいの激痛を覚え、トイレに行くのが恐怖になるほどだった時期が
確かにあったと。
ただ、そういう現象が3周期ほどあったものの
いつの間にか症状も消えてしまったので、今となっては忘却の彼方だったのです。
もしかして、アレがソレだったのだろうか....いやでも7年前.....
そもそも、内膜症ってだんだんひどくなるものだと思っていたけど、活動性が上がったり落ち着いたりするものなのか?
と、婦人科素人の形成外科医が一人で考えていても埒があきません。
そんなとき
そうだ!彼女に聞いてみよう!!
と、一人の大学医学部同期女医の顔が思い浮かびました。
産婦人科医の彼女は、確か子宮内膜症が専門だったはず。
そこで、退院後まもなく、Facebookでつながっている彼女に、メッセージを送って質問させてもらいました。
専門家の知識って、素晴らしいですね。
私の聞きたいことは、すべてクリアになりました。
専門家かく語りき
子宮内膜症進行度のⅠ,Ⅱ期は腹膜病変(炎症による発赤等)が主体で、腹腔鏡をしないと診断がつかない時期だけれど、この時期の方が痛みは強い場合はある。だから、7年前ほどに月経痛がひどかったのはこの時期かもしれない。
卵巣にチョコレート嚢腫があるとそれだけでⅢ期以上になり、今回の手術所見ではダグラス窩閉鎖もあるとのことだからⅣ期に当たるが、Ⅰ期からⅣ期になるまで大体10年前後かかるといわれている。なので、痛みがひどかった時期と照らし合わせて、臨床像もだいたいあっているかと思う。
最近痛みがあまりひどくなかった=活動性がさがった、とは言い切れない。卵巣が腫れていると緊満した痛みを感じる人もいる。ただあまり月経痛がひどくなくても、内膜症はひどい、という患者さんは確かにいる。
他の疾患同様、内膜症は多彩な病態を呈するので、教科書どおりにいかないことは当然たくさんある。
内膜症Ⅰ,Ⅱ期の軽症内膜症は月経痛のみのことが多く、進行してⅢ,Ⅳ期の重症内膜症になると月経痛+月経期以外の慢性骨盤痛、排便痛などが出現するといわれている。なので、痛みという点からは(今回の私のケースは)例外といえる。通常はダグラス窩が閉鎖しているような病態であれば慢性の排便痛などあってもおかしくないので。ただ痛みはどうしても主観的なので感じ方に個人差がある。
彼女の説明は大変わかりやすく、非常に納得のいく内容でした。
最後に、一つ聞いておきたくて、追加で質問しました。
そうすると、7年位前めっちゃ痛かった時に婦人科を受診して、ピルを内服したり進行度チェックしてもらったりしていれば、私の腹腔内の高度癒着は避けられたかもしれないのかしら?
もしそうだとしたら、今後周りで月経痛にお悩みの知人や患者さんがいたら、ちゃんと受診を勧めてあげたいなと思って。
この問いに対する彼女の答えは
「かもしれません。ぜひ周りの方には婦人科受診をすすめてあげてください。」
そして、今回のやり取りを記事としてブログにupすることを快諾してくれました。
何から何まで感謝です
彼女の言葉を、皆様にお伝えします。
「月経痛はほっておいていいもの」ではありません。
よく
「母親もあったから様子見ていて大丈夫」
「痛み止めをのんでがまんするもの」
と思っている人も多いけれど
器質的な疾患が隠れていないか確認したり
内膜症に関する正しい知識を得たりするためにも
迷わず婦人科を受診してもらいたいと思います。
彼女が教えてくれた、子宮内膜症関連の情報が得られるサイトがあります。
もし私のブログの読者のかたで
「ひょっとして....」
と心あたりのある方がいらっしゃれば、ぜひ、のぞいてみてください。
一般の方向けのチェックリストや、マンガ形式でわかりやすいリーフレットなども無料で読むことができます。
7年前の自分に教えてあげることはできないけれど、今この記事を読んで誰かの助けになれば、あの頃の私も浮かばれるってもんです
自分の体の声を、大事にしてあげてくださいね。