形成外科医の仕事 | 文京区小石川 もものマークのクリニック 院長ブログ

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文京区春日駅最寄りの形成外科・皮膚科のクリニック。
湿潤治療、シンプルスキンケアのこと、もっと皆さんに知ってほしい♪

形成外科医は

病気やけがなどによって生じた、体の表面の異常を主に治療する医者。


外傷の治療でも、何らかの手術をするときでも

やはりどこかで「できるだけ見た目を綺麗に治したい」

という思いを抱きながら仕事をしている医者なのではないかという気がする。


見た目は大事。それは事実。

でも、それが全てでもない。


むしろ重要なのは見た目そのものではなく

その見た目を患者さん自身がどう受け取るかということ

これに尽きる。


医局から派遣された病院に勤務していたときのこと。

交通事故で、それはそれは結構なキズを顔に負った青年が、夜間に救急搬送されてきたことがあった。

顔を斜めに横切る大きな切り傷だけでなく

破損したフロントガラスのかけらが顔中に刺さっていた。


形成外科医2人でガラスをせっせせっせと取り除き

ズバーッと切れた顔を、細い糸でちくちくちくちくと縫合した。


.......あれ、何時間くらいかかったんだっけ?


形成外科医のプライドをかけて丁寧に縫合したけれど、彼の顔にはブラックジャックのような傷跡が残った。


退院してからも、外来に通院してもらって経過を見ていたが、傷が完全に消えるわけもない。


ある時私がふと尋ねた

「どうですか?傷あと、やっぱり気になりますか?」



すると彼は言ったのだ


「うーーーーん、まあ、気になるっちゃ気になるけどさ

これだけ跡に残るケガをしておいて、目もつぶれてなけりゃ、鼻ももげてないわけでしょ。

顔だってちゃんと動いてるし。五体満足だし。何より命拾いしたわけだし。

先生、これ頑張って縫ってくれたんでしょ。

そんな申し訳なさそうな顔しないで下さいよ。」



ハッとした。


今、私どんな顔してた?

申し訳なさそうに「こんな傷が残っちゃって気の毒に」って顔、してたんじゃないか?

何たるお節介
何たる余計なお世話


傷跡を気にしているのは、私の方だ。


本人は、今の状況を受け止めて、日常へ戻ろうとしている。

それに水を差すような行為を、医者がしてはいけない。


見た目にこだわるのが、形成外科医。

それは、悪いことではないけれど

こだわるポイントを間違えちゃ、ダメだよね。


見た目を良くすることが、ダイジなんじゃない。

患者さんが、より幸せに、自分の足で歩きだせるようになることが、ダイジなんだ。


医者がするのは、そのお手伝い。それだけ。



もちろん、プロの目線で
より良くするにはどうしたらいいか
を常に考えるのも必要。
でないと進歩もないからね。
その辺の線引きは、ホントに難しい…汗