先日夫に質問されました。
「あのさ、ハイドロコロイドって、かさぶたに貼ったらいけないのかな?」
夫は医療とは全く関係のない仕事をする人なのですが、
何せ妻がこんな感じなので、否応なく湿潤治療関係に詳しくなっています
『ハイドロコロイド』 なんて、舌をかみそうな単語もスラスラ。
それはさておき。
小さいお子さんのいる同僚が、最近擦り傷を作ったそうで。
たいして深くはなさそうだったので、特に何もせず乾かしておいたらかさぶたになった、と。
かさぶたにはなったものの、なかなか取れない。おまけに痒がる。
この段になって
「擦り傷にはキズパワーパッド」
という例の有名なキャッチフレーズを知ったものの、ここで疑問発生。
かさぶた出来てからじゃ、貼っても意味なくね
それを聞いた我が夫、早速帰宅して妻に聞いてみましたとさ。
というわけで、ようやく冒頭の質問につながります(説明長…)
結論から申しますと
大丈夫ですというより、むしろハイドロコロイドおススメです
ちょっと小難しい話になりますが
皮膚は、表面から大きく分けて「表皮」「真皮」「皮下脂肪」という層構造をなしています。
いわゆる擦り傷は、表皮が器械的に削られて、真皮がある程度露出してしまっている状態です。
このブログで取り上げている湿潤治療は、
露出した真皮の乾燥を防ぎ、表皮の再生を促す治療法です。
一方昔ながらの「すり傷は乾かして治す!」という方法の場合・・・
露出した真皮は表面が乾燥・ミイラ化してしまいます
こうしてできたミイラが「かさぶた」です。
真皮には厚みがあるので、乾燥して一部ミイラ化しても、
その下に残った部分で皮膚の再生が進みます。タフですね
こうして無事表皮まで再生すると、かさぶたは押しやられ、
傷の表面から剥がれていきます。
つまり「かさぶた」の状態では、傷が治ったとは言えないわけです。
それに、
かさぶたが痒くて引っ掻いてしまったり、
気になってついついむしってしまった、
そんな経験、誰でも一度くらいありますよね
かさぶたをむしって、血が出て、またかさぶたになって・・・・・嗚呼エンドレス
ハイドロコロイドは、このような無限ループに終止符を打ってくれる強い味方なのです!実は!!
かさぶたにハイドロコロイドを貼ると、かさぶたがふやけてきます。
もともとの傷が浅く、かさぶたも薄い場合
ハイドロコロイドをはがしたときにかさぶたも一緒に取れて、
つるっとしたピンクの皮膚が登場します
これすなわち 「傷が治った」 状態です
大半のかさぶたは、こんな感じであっさり取れることがほとんど。
でも、たまに、もともとの傷が思いのほか深く、かさぶたも分厚~~~い場合もあります
そのような傷にハイドロコロイドを貼るとどうなるか。
ふやけたかさぶたは、白っぽくゆるゆると変化して、
一部溶けたりなんかして、
一見 「膿んだ」 と焦りたくなるような見た目になります。
でも心配しないでください
傷の周りが赤く、痛くなっていなければ、それは感染していない(=膿んでいない)ハズ。
この、膿んだっぽい、キタナい見てくれの物体は、
ハイドロコロイドでの保護を続けていくことで徐々に浮いて、
ある時、取れてきます。
その下に、赤く綺麗な組織(医学的には「肉芽」と言います)が見えてくれば
あとは治癒に向かって進むのみ
湿潤治療を続けて、皮膚の細胞をすくすくと育てていきましょう
傷はどんどんふさがっていきますよ
ただし、後者のような分厚いかさぶたの治療は、
経過も長くなることが多く、
初心者が自分で治療するのはハードルが高いだろうなと思います
あまり無理せず、心配な時には、湿潤治療に詳しい医師に相談してくださいね