393、プロの目・空調設備 | 松下アキラ

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「自信があるのはどこですか」
唐突に尋ねられて、とっさに返答が出来なかった。
自信?
瞬時にさまざま考えが頭の中を巡った。
自信があるものなんてあったかな。
そんな話を人にした事がないし、考えた事もない。
自信なんて欠片もない。
学歴、才能、家柄、美貌、実績、人脈、人望、収入、財産、強運、努力、体力、個性、どれもない。
そういえば、誰にも負けない自信のあるものが一つあるだけで人生が豊かになると聞いた事があるが、うん、一つもない。
突出したものなど何もない。
何をおいても上を見ればキリがないし、下を見て比べるのも虚しい。
ずっと埋もれて生きてきたし、これからはもっと泥沼の底に沈んでいくだろう。自信なんて持てるはずがない。
仕事は舞台でコメディーを演じているが、人を笑わせるのは好きだけど得意ではないし、ずっと答えを探し続けているのに自信などあるはずがない。
仕事は開店休業でまったくなく、もちろん金もない。何も買えないから自慢出来るような物は持っていないし、今日食べる物にも困る有り様だ。
不細工な強面で厳つい身体にダサいファッションで話術もないからモテるという事もない。
男らしさもなければ優しさもない。楽しませる雰囲気もないし、すぐに黙る込むから人から好感を持たれる事もない。
何かを成し遂げた事もないし、過去の栄光などもちろんない。
思慮深いと言われる事があるが無駄に考えすぎるだけだ。無駄に考えすぎてほぼ無駄に終わる。
私の行動の原動力は好奇心のみ。
知りたい。やってみたい。確かめたい。
そのあと好きになれば夢中になるかもしれない。
しかしそれだけ。
少しばかり夢中になるだけで、そのものに対しての知識や技術が果てしなく向上するかといえばそうでもない。
何をやっても取り組みが中途半端なんだ。
才能もなければ努力も出来ない。
卑屈さにおいては誰にも負けない自信がある、とも言えない。
コンプレックスの塊で卑屈になってる人なんて世の中にごまんといるだろう。
私の卑屈さなんてまだまだ甘い。
世界中でたった一つのものなんて何も持ってない。
世界の全ての人に負けないものなんて何もない。
日常生活の中で小さな幸せや面白いものを見つけるのは得意な気もするが自慢出来るほどものではない。
せめて個性的でありたいと思うが見た目も発想もありきたりだ。
自信なんかあるわけがない。
自信に満ち溢れた男が輝いているというなら、私はくすんでいるのだろうか。
卑屈さに自信を持ってる人も輝いているのか。
そんな人よりも遥かにくすんでいるのか。
いっそ闇なのか。
「ぼくは脚ですね。大腿四頭筋がまあまあ自信ありますね」
ジムで話しかけてきた顔見知りの男はさらに続けて喋る。
「松下さんは背中がいいいですよね。僧帽筋から大円筋の厚み、広背筋の広がりがシャツの上からでも分かりますよ。タッパがあって肩幅もあるから迫力ありますよね。三角筋なんかも自信あるんじゃないですか」
私は言葉に窮した。
これは腰を据える必要がありそうだ。