月も星も居ない午後

 

スピーカーが奇声を発する

ピンク色した車が走り抜けてゆく

 

その脇では

為政者が

あらん限りの美辞麗句を鏤めた

虚妄を吐き捨てる

 

いかがわしい塗り絵が

交差点を横切れば

その裏の裏では

女の

不穏な悲鳴と絶命

 

彼の美しく澄んだ声は

いとも容易く萎びた

 

大資本に躾けられた

四角い箱から

垂れ流される絵空事

有難がる従順なる市井

 

お天気お姉さんが綺麗だから??

 

額面通り嘘を受け取って

手を洗えば

手水場が黒く濁る

 

聖職者が

清らかな心で少女を犯す

その手でタクトを振り回せば

雑音が響き渡る

虚栄を纏った女

聴き入り

口からこぼれた言葉は

贅沢な匙

あゝ

出自が垣間見えて...

 

それでも彼は

守りたいものが

あるからこそ

交差点に立つ

 

裏切りの警官が

サイレンを撒き散らせど

眠ったままの巨悪

強きを助け

弱きを挫く

これが正義の正体だと

階層社会を誇示し

脅す

 

枝にとまって

居眠りをしている青い花を

掴もうと

手を伸ばした少女

諦めという名の

時代の申し子よろしく

潔く手を下ろした

待ち受けている運命(さだめ)が

生か死か??なら

せめて雑念を取り払い

涅槃へと・・・

母親は泣いた

 

少女が最期に詠った歌など

誰も知りはしない...

 

懐に憎悪を忍ばせた外国人に

優しいフリをすることさえ

拒絶した

この国はどう映る??

 

絶望の時代に煽られて

電車に飛び込んだ青年には

メロディーさえ無く

引き攣った

特急電車の警笛の音が

遺言だったなんて...

 

虚飾に塗れた女の

その蝶々しさに

掻き消されても

搔き消されても

君の美しく澄んだ声

聞き取れるよと

善意を払ったなら

彼は彼の善意を返してくれた

 

精神病院から漏れて来る

悲哀に満ちた嗚咽も

 

今夜

飛び降りる

彼女からの

最期の着信も・・・

 

錚々たる死に様が

鳴らす

鈴の音騒めくこの街を

縫って歩き

 

波風は立てど

波乗りさえ出来ないこの街を

サーフィンして...

 

全ての被害者よ

何処へ向かう??

 

彼は

守りたいものが

あるからこそ

交差点に立ち続けた

やはり

とても美しく

澄んだ声だった

 

そんな彼を陰乍ら応援する

俺は・・・・・・・・・・・・・・・・