桜子が手を伸ばす

枝にとまって居眠りしている

青い花を掴もうと

 

しかし

30㎝足りない...

 

潔い??

それとも従順??

いとも簡単に手を下ろした

 

諦めという時代の申し子は

決してこの娘だけじゃないが...

 

その場に立ち竦んで

風の向きさえ分からない

それが恥ずかしい事なのかさえ

 

わたしは学ばなかった

学べなかった・・・

 

でもね

ほら

こうやって小指を差し出せば

赤蜻蛉がとまってくれる

 

血の通った人間なのよ

 

ハンガーラックの中に青い服

桜子には

一際輝いて見えた

 

お母さん欲しいよ

着たいよ・・・

 

堪りかねた母親は

この世の無情と共に泣いた

(ごめんね)

 

桜子は謝るしかなかった

(お母さん ごめんなさい)

 

店内に嗚咽が漏れる・・・

 

俯き加減の店員が呟く

あの娘に

プレゼントしてあげたい

けれど

それは無理な話

わたし達も

この安月給で

身を千切りながら生きているの

(ごめんね)

 

嗚呼 

大団円無き薄情な時代よ...

 

ねえ桜子

お腹空いたでしょ??

朝から何も食べてないから...

 

大丈夫

水道の水を飲んだから

 

桜子...

何時以来だろう

抱き締めると

憐れなまでに痩せ細った身体が

突き刺さり

痛みすら感じた

(本当にごめんね)

 

桜子

ちゃんとお留守番しててね

 

うん

何処へ行くの??

 

ちょっと・・・

 

夕暮れ時のスーパーマーケット

食品が安くなる時間帯を

見計らった

衆愚の列

 

母親はそのどさくさ紛れ

震える手で

お弁当をバッグの中に忍ばせた

(神様 お許しください)

店を出る

 

奥さん

ちょっと待ってください

ガードマンです

鞄の中を見せて貰いますよ!!

 

すみません

妻がお弁当の料金を払うのを

忘れたみたいで

わたしが払います

 

分かりました・・・

 

ありがとうございます!!!

 

貴女と貴女の娘さんを助けに参りました

俱楽部(優しさの限り)のマスター

コムサデモード・ビー・ワッショイと申します

 

お母さんも娘さんも

限界だ

ここまで

よく頑張りましたね

けれど

もうこれ以上

頑張る必要はありません

 

さあ 行きましょう

 

資産家の老夫婦の善意の元へ

美味しいもの沢山食べような!!

 

うん!!・・・・・・・・・・・・・・・・