生まれたての紫陽花

水色のヴェールに

閉じ込められて

息をするのも煩わしいからと

呆気なく死んだ

 

生後間もない女の子の遺体と

遺棄した二十二歳の女

 

当たり前の様に降る

六月の雨に罪は無いさ

 

花が華の刻を拒絶しても

裁かれることは無い

 

受難の曲が鳴り響く

螺旋回廊を

徘徊するのも辛かろうと

愛娘を解放した

若い躊躇いは檻の中

そこには

肌触りの悪い

六月の湿った風が...

 

(殺したい時代)に

またやらかしちまったな

 

横浜辺りじゃ

女性が刺され死亡

面識の無い無職の

三十代の男を逮捕

 

彼はふてぶてしく笑った

(殺したい時代なのさ)と

 

そして刑事に尋ねた

 

暑くもないのに

冷房を浴びて凍えるのと...

 

白装束を纏って

滝を浴び

神の存在を誇示する

ロックンローラーの

ラブソングと...

 

何が違うのか??と

 

分かってる

六月の粘ついた雨と

湿気た風が

(殺したい時代)という名の

気分を

煽っているわけじゃないと...

 

つまるところ

帝国が爛熟の果ての頽唐へと

向かうさなかに

生れた

虚無的.退廃的.病的な唯美性と

 

仇への積年の想いとは

 

似て非なり

 

国策の誤りに所以した

(殺したい時代)の台頭とでも

言えばいいのか・・・

 

同時に

もう

自己責任論をがむしゃらに

流布させようとしても無駄

やがて

自己責任論は消滅し

それに絆される者も

居なくなるだろう

責任なら

全てを

(誤った国策)に

擦り付ければいいだけで

 

更には

テーブルから転げ落ち

破綻した

躾や倫理観が

行き場を失い

そう

(殺したい時代)の

道徳なるものが

誕生したのも

(無様な為政の性)と

名付ければいい

 

俗世を捨て

苦悩を深く洞察してゆけば

この世界に於ける

不条理か??

海溝を泳ぐ一羽の

燕か??と

言葉遊びをするよりも

 

この地で

最初に

裁かれなきゃならない者の

名前を

堂々と大声で

晒してやればいいのさ・・・

 

忘れてくれるなよ

圧倒的な数を有する

大衆が

マジになれば

上級国民など

三日で

制圧し得るであろうことを

 

やがて紫陽花も枯れる

やがて向日葵も枯れる

やがて秋桜も枯れる

これ以上

巡る季節を黙って

眺めているだけじゃ・・・・・・・・