貴方

あの子過ちを犯そうとしている

この家族が消えてなくなってしまうような

 

うん

行き先を誤った情熱の赤い炎が

甘やかし過ぎた俺を脅す

こんなことになるとは

 

もうこれ以上は...

 

分かっている...

 

また今年も咲き誇ったのね

貴女がどうこの世の栄華を誇示しても

やがて

露と落ち露と消えるその儚さに

この涙

呉れて遣るわ

賓...わたしから逃げるの??

ならば

貴方と母との時間さえ

焼き尽くしてしまわなければ・・・

 

もう子供じみた鬼ごっこに終止符を

貴方は男優

わたしはたった一日だけの女優

ハリウッドで愛の渦に巻き込まれたなら

けりをつけましょう

始まりという名の・・・

 

もしもし

ああ...優子か

 

お父さん

わたし今ハリウッドに来てるの

LA.京都旅館

444号室に居るわ

 

分かった

父さんもお前に話があるんだ

今から行くよ

 

鏡の前で全てを脱ぎ捨てたわたしは

呟いた

綺麗でしょ?? イイ女でしょ??

赤いルージュ

ベッドには赤いシーツが敷き詰められて

 

父がドアフォンを鳴らす

 

いきなり

一糸まとわぬ娘に抱きつかれ

愛してると言って

わたしをオンナにして

わたしを賓の女にして...

 

父親は娘をベッドに突き飛ばし

パシッ

その頬を打った

 

優子 目を覚ませ!!

 

その時だった

いきなりドアが開く

薄笑いのパパラッチ

緒方賓さん

撮らせて貰いましたよ

素早く逃げ去って

 

父は天井を仰ぎ見ながら

黙っていた

それは

彼が

全てを失った瞬間

 

こちらロサンゼルス支局

緒方賓さんの記者会見会場です

世界中が注目しています

 

娘さんとはどういう関係なのですか??

 

ホテルで裸とはただならぬ関係ですよね??

 

多くの質問が飛び交いましたが

最後まで一言もなく

会場を後にされました

 

翌日

何一つ語らぬ

緒方賓はLA.コネクション40階から飛び降り

帰らぬ人と成った

世界中を衝撃が駆け抜けるさなか...

 

散る桜を眺める優子

わたしが愛した緒方賓は

わたしの父親である西野圭吾に戻り

わたしさえ西野圭吾の娘で在り続けていたなら

こんな悲劇は

けれど

どうしようもなかった

物心ついた頃から

緒方賓を男として愛していたのだから・・・

 

舞い落ちた一片その頬を濡らす

 

・・・・・・・・・・

 

優子ちゃん

飲み過ぎだよ!!

もう帰って寝なよ!!

 

ダメ...もうちょっとだけ飲ませて...

 

いらっしゃいませ

 

えっ??賓??

聞き慣れた声が椎名林檎を

見慣れた顔

うすぼんやりと夜灯かりに照らされて・・・・・・・・