5月ももう終わり

 

 

 

初夏の雨は優しくもあり時に激しくもある

風のぬるさに我が人生を省みれば

雨宿りする野良猫の奏での険しさを前に

この身引き締まる

 

何も成し遂げられなかった

そのひ弱さを

アスファルトに打ち付けても

人生に夢は二つはないと奴が舌を出した

 

手も足も出せなかったと泣き喚く俺を

紫陽花が覗き込む

 

もしもピアノが弾けたなら

思いの全てを歌にして

君に伝えることだろう~~~~

 

昭和の歌を口遊めば

心が落ち着くのは

やはり 老いぼれてしまったからなのだろうか

 

ピアノ・・・

何方かが

最近はピアノを弾いているんです

フジコヘミングなんかを気取って

等と仰っているのがとても優雅だった

けれど一言だけ言っておきたい

優雅だからこそ

混沌として猥雑な市井に於ける闘争の事等に

口は出さないのが流儀ではないのか・・・と

 

そう呟きながら改めて紫陽花の群れを見遣る

咲き誇った大輪のその豊潤さに魅せられ

今まさに咲き誇ろうと精一杯息をする

その姿に時を駈ける少年を見

咲きそびれ花開かぬまま既に枯れかかっている彼が

このひ弱な俺すらからも目を逸らすのが哀しい

 

さて

相変わらず季節(五月)は何も言わぬまま通り過ぎていった

時が経つのは早いという言葉に

発奮する者 落胆する者を置き去りにして

 

寒く寒い元日の誓い

ささやかなものから大き過ぎるものまで数多

 

咲いた人 咲きかけの人 枯れた人 散った人まで

無情の中に佇む夢の儚さよ

どうか清く正しく美しい夢が叶わんことを

 

もはや何も望むもののない俺は

しかし何かを望もうと

この身を揺するも

そこには歌が流れているだけ

 

雨が降る日は雨のように

風吹く夜には風のように

晴れた朝には晴れやかに~~~~

 

天国のジョニーサンダースへ

もうロックは聴けない 聴かない・・・ごめんよ

 

何の前触れもなく

転がり込んで来た六月に驚くこともないが

この心に去来する想いは

争い疲れた後の静寂の中に棲み付いた蛍を

無心で追いかけてみたい・・・

思わず(寛美)=(俺が人生の中で一番に愛した女)の名前を

声に出しかけて しかし飲み込む

 

そう 俺が生きているという奇跡を俺自身が褒めてやらねば

バイバイ五月・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・