彼に品格を求めるのは無理みたい

 

高級車にブランド物そしてタワーマンション・・・

絵に描いた様な成り上がりの田舎者

成金臭さえ漂ってくる

 

えっ??そのスーツにそのベルトにそのネクタイ??

やめて!!その食べ方!!・・・

日常茶飯事

 

車に乗ったら乗ったで

前を走る人を威嚇するかのように

クラクションを連打

クラクションの音さえ下品

邪魔なんだよ!!この野郎!!

嗚呼 

もう救いようが無い

昔風に言えば質の悪いオラオラ系

 

貧しい派遣社員だった私は

哀れにも富を前に跪いた

 

でもね 

もう別れるって言えないの

この人の子供を宿してしまっているから

 

あっちこっちで浮気していることも

彼の会社が醸す危険な兆候も

何もかも知っている

そしてこの先どうなってゆくのか

大方の察しはつく

 

お金に恋をしてしまった者への罰なの??

この人と

どんな苦難も乗り越えて

なんて気持ちも

更々ないくせに

 

痴人の契り??

忸怩たる思いは

豪奢なる披露宴という檻の中で

戸惑う華奢な見世物への嘲笑??冷笑??

(遁げ出す)という言葉の本質を

知らしめられて

 

この人と赤ちゃんとそして私

歪な関係が始まれば

遂に牙を剥いた猛獣の嫉妬深さ

竦む母子を半ば監禁

執拗なまでに監視された生活と

ご褒美と称するラグジュアリー

募る想いはこの子を連れて遁走

 

理性ある彼の相談役からの電話は

 

会社は破綻しました

そして社長は自殺しました

葬儀までの後始末は私にお任せください

奥様そしてお子様に

被害が及ぶようなことは一切ありませんので

どうかご安心を

 

ありがとうございます

 

葬儀当日 冷たい雨

見る影もないくらいに寒々しい

お金を振り翳す者と

お金に集る者と

お金を失った者への背信・・・

 

ギラついたタワーマンションを出て

質素に帰れば

正気に戻る

 

貧しいながらもこの子を抱え

額に汗し

地に足のついた生活を三年

 

こんな時代を生き抜く

シングルマザーだぞと

夜空に叫ぶ

 

そして運良く

この子の幼稚園への入園が決まれば

一段落したと胸をなでおろす

 

もう男はこりごりなんて言いながらも

私もまだまだ乙女なの

 

派遣先のとても紳士な貴方が

ほんの少しだけよ

気になる

でもこっそり目で追う それだけ 

 

人生一難去ってまた一難なんて云うけれど

息子が・・・

仕事に行く 幼稚園に連れて行く

その度私に抱きついて抱きついて

引き離そうものなら

狂ったように泣き喚き

遅刻 欠勤 登園しない という有り様

 

ただ陽昇陽没素敵な貴方を見つめていたいという

淡い想いとは裏腹に・・・・・・・・・・・・・・・