にゃんこが私にしてくること

 

 

 

果てしなく続く青い空

果てしなく長い道

最果てと最果ての中央

佇む猫

昨日飼い主に捨てられたばかり

断腸の思い抱いて

青く照らす不実な空を睨み付けた

その瞬間を切り取れば

哀愁を帯びた赤

 

智に働けば角が立ち

情に棹させば流される

なら 

アンタは一途さと何処を走る

不意に戻りたくなっても

行き場を失ったその心で

断ち切るだけ

折れて

踵を返し戻って来るのには

三年はかかるだろう

 

けれど

ここはもうすぐ取り壊されてしまう

詰まるところ永遠の別れ

 

せめてカニィーだけは

その傍に置いてやって欲しかった

 

帰る場所がなくとも

帰る場所をつくってしまえる程

器用じゃないから

雑踏の中に紛れ込んで

泣きながら

逢い屋を渡り歩く

ここに帰る他ないと知りつつ

 

ここには

大人に成れなかった者同士が

縺れ合う為の

街の底辺を流れる流儀が

公然と漂っているから

 

それは

卑屈に詫びる他ないという

愚民たる者の唯一の手段

 

なのにアンタも俺も詫び損なった

結末を知っていながら

 

底辺を行く者に

まだ自尊心が残っていたとは

意外であり 哀れであり

しかしながら

我らも所詮人間だったということか

 

砕け散って初めてさんざめくもよし

奇跡と遭遇し摩天楼を昇るのもよし

さらば戦友よ

 

人は愚かだ

猫はクールだ

早速掌を返し餌をねだる

なんという生命力

自らを守る為に被った可愛らしさ

 

そして美味い飯を振る舞えば

ニャーと尻尾を振る

 

だから思わず撫でてやりたくなる

 

天性の

人に訴えかける巧みさよ

 

さあ

お前は乾いた心で

俺は湿った心で

 

岬めぐりだ

 

窓に広がる大海原

波飛沫

カニィーお前は見ないのかい

お前の飼い主さんが大好きだった景色を

 

首を傾げ

したたかに甘い感傷か・・・

 

だったら今日から俺が飼い主だ

それでいいんだな

 

あのヒトの事はもうとっくに忘れたか

 

ニャー

 

やっぱり恋しいんだ

お前が優しさを持ち合わせていると知って

俺は微かに笑んだ

 

そう人も猫も

本来は優しすぎるんだ

その優しさに甘えて

争っているようじゃ

真の平和はまだまだ遠いんだろうなと

溜息一つ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・