東京は未だ渋滞したまま

身動きさえ取れない

毎日がディズニー・ランドの賑わい??

そんなあどけないものじゃない

 

そう もっと殺伐としている

 

月が顰めっ面するくらいに

溢れ返った虚栄の光の塵 幾千万

 

秘めたる

穢れた紙幣だとか安っぽい名誉だとか

売名甚だしい輩だとか・・・

 

そんなのが必死に攀じ登ろうとしている隣で

普通に生きる難しさを

東京で生まれた女だからこそ

犇々と感じている

 

けれど 私も

 

雪深い田舎町から

理由も無く上って来た

雪道を歩いていた方がずっと様になる

未だにアスファルトの上をたどたどしく歩く

冴えない男と

 

愛媛の伊予柑コンテストで準ミスに選ばれ

ジュリアナ・東京のお立ち台からの眺めが

最高潮だった女が

 

神田川の見える安アパートで

縺れ合った末に

生れた

 

混じり合い 詰り合い 鬩ぎ合い

息をするのも煩わしい程に東京

 

普通であることの定義すらわからないが

辛くも普通に生きているのだろう

 

そこそこの大学を出て

それなりに名の通った企業で

オフィス・レディーさんしているのだから

 

でも・・・

時々刺激が欲しいかな なんて 思ったりもする

それが恋ならお誂え向きよねなんて フフ

 

大阪で生まれた男が

大阪本社から転勤してきた

小川を流れる水のように涼涼としてクール

 

あの 関西人特有のべたつきは皆無

 

私では真似できないくらいの

美しい所作と仕事っぷり

 

悔しいけど気が付けば彼を見つめている

はっきりと分かる 

これは恋なんだって・・・  

 

役員室に書類を届けに行くと

専務に呼び止められる

 

大阪から来た彼の事だが

彼はなこの巨大企業グループ

創業家の御子息だ

つまりあの若さにして次期総帥なんだ

厳しく躾けられた賢すぎるサラブレッド

 

今の総帥は人情味溢れる優しい方

決して無理せず

リストラ一人さえ出していない

だが彼の時代に成れば

冷酷無比に

グループの在り方を

ラディカルに変えてしまうだろう

早くに二代目を亡くしてしまい

三代目である彼はそういう男だ

 

そう言って溜息一つ

他言無用だぞ!!

 

はい!!

 

そうだったんだ

自動販売機にもたれかかり

午後の紅茶を飲む私まで溜息

そのちょっとはしたない姿を

窓をすり抜けてきた夕陽が照らす

 

そこへ彼が

 

単刀直入に言うね

君 僕のこと好きだよね

そして僕も君が好き

まどろっこしい結婚までのプロセス抜きに

婚約しよう

芙蓉グループ総帥夫人に相応しい

紫色した百合に躾けてあげる

どう??

 

なっ なっ なっ 何なんですか!!!!!・・・・・