我は敗北者なり

社会から転落し

妻すらからも見捨てられ

心失ったこの身が

おめおめと生きながらえ

ここに停泊している

 

更には

この醜悪さを

娘が睨み付けて已まない

その視線が刺されば

痛く痒い

 

痛みが

痛切に人間であることを

突き付けてくる

それが辛い

 

剥がれた絵

枯れた花

饐えた臭い

 

半ば嫌気がさした

娘が擦れてゆく

 

今 

煙草を吹かしながら

出て行った

ここには

私一人しかいないという

事実を残して

 

さあ

堂々と妻の部屋に違法侵入

しようではないか

 

若い男の移り香に噎せ返る

 

未だ見ぬ彼の

若さを前に

たじろぎ

惨敗を喫したのだ

 

今頃他人棒を貪っている

裏切り者にお仕置きだ

 

たった一人の味方が

いきり立つ(起つ)

 

鏡台に座れば

心が逸る

逸る心を押さえつけ

念入りにメイク

 

金髪のウイッグが・・・

こんな物を持っていたとは

ええーい 被ってしまえ

嗚呼

我はマリリンモンローなり

奇声を発する

 

ドルチェ&ガッバーナの香水を

纏えば

興奮のるつぼ

 

さて

これが

ブラジャーなるものか

怪しからんと言いながらも

付けてしまえば

花が恥じらう

 

いよいよ勝負下着だ

なんという小ささ

なんという様悪さ

許し難い

そう言いながらも

付けてみると

興奮は最高潮へ

 

ストッキングを履き

ガータベルトを装着

真っ白なブラウスに

赤いジャケットを羽織り

 

なんと!!

こんなにも短いスカートを

隠し持っていたとは

抜け目ない雌め

ええーい 穿いてしまえ

 

見事なる(おとこ・おんな)は

この明媚なる風景を

お披露目すべく

ルブタンを履いて

勇んで街に出没

 

まるで

悪意が棹さす様に突き進む

 

顏を顰める人々を

嘲笑うかの如く

 

山が燃える

海がうねる

空がさんざめく

風の窘め

 

遂に道徳警察が動く

取り押さえられて

上野動物園の檻の中

 

見世物

人格破綻者として

人気を博せば

彼は切々と生きて来た

証を語り掛ける

 

何時 誰が 何処で

転落してしまうのか

わからぬ現代にて・・・・・・・・