あなたはこの地に伝わる、白鳳の伝説を知っているだろうか……。
その時わたしは、無知・無能・無鉄砲であった。
白鳳がこの地に降りたった後も、無知・無能だったが、向こう水ではなくなった。
それは、白鳳が何も語らず、ただその輝く姿でわたしに教えてくれたからだ。
その3時間の出会いによって、今までの50年以上の経験をも凌駕する衝撃をわたしに与えた。
白鳳はその日、わたしが犯した重大な過失の処理を手助けするべく天から舞い降りた。
炎天下、感電死すれすれで電線の間を幾度もすり抜けた。3時間のあいだ、わずか10秒間も休むことなく、白鳳は舞を続けた。
わたしといえば、なす術なく、冷たい地面の上に寝転がり、ただその舞を眺めることしかできなかったのだ。
それなのに、わたしは疲れ果てて、翌日にはひどい筋肉痛に襲われた。
白鳳はわたしの犯した過失の処理を終えると、何事もなかったかのようにわたしの目の前に現れ、穏やかにほほ笑んだ。
わたしが何かを懐から差し出そうとするや、それを受け取らず、華やかに再び天に戻って行った。
白鳳の疲労を想像するだけで、わたしは嗚咽をもよおした。
わたしはずっと、冷たい地の上で寝転がっていただけなのである。ただ白鳳の舞に見惚れていた。それだけだった。