15歳だった頃の筆者は専ら、レーナードのフリーバードで目を覚まし、ジャクソン・ブラウンのTake It Easyで通学し、エアロにガンズなどの比較的ストレートなロックを聴きながら放課後の帰り道をノリノリで帰宅するのが日課であった。

レニー・クラヴィッツにも相当ハマった。
Let Love Ruleはサックスソロが神がかった名曲だが、当時の私には新鮮であった。
サックスやトランペットは、ジャズの専売であるという固定概念があったのだ。



「狂気を聴けばすべてがわかる」

時は移り、16歳の終わり頃だったと記憶している。
かつて知人から言われた言葉が、何故か不意に筆者の心にこだました。
何となしに部屋の片隅で埃を被った、幾何学模様のそのアルバムを引っ張りだし聴いてみると、以前とは明らかに違い、うずまき管から脳へと伝わっていく。

初めて「狂気」を聴いた時から、様々なジャンルの音楽を経て、ようやく筆者の身体に浸透してきたのである。
原子心母やらおせっかいなどは聴いていたので、別にフロイドを敬遠していたわけではない。
あくまで、「狂気」が入ってきていなかっただけだ。

MoneyからUs And Themへ連結してからの流れは、曲単体では味わいが半減してしまう。
ベスト版エコーズでは、One Of These DaysからUs And Themに繋がるのだが、やはり「狂気」でなければ、と感じた。

「狂気」は再生する毎にその深みを増していく、噛めば噛むほど味がでるスルメ盤である。
音楽は宇宙であり、宇宙は「狂気」である。
そしてその狂気とやらは、確実に人間の奥底に眠っている。その衝動を「狂気」は呼び覚ましてくれる。

狂気を呼び覚ます「狂気」は、人間にとってはこの上ないα波となり得るのかもしれない。
究極の心地よさの果てに、「狂気」は君臨しているのだ。

ロジャー・ウォーターズのしたり顔が目に浮かぶが、悔しいかな最強の名盤と認めざるを得ない。









あらゆる答えは狂気の中ににて