外れだな。

当時15歳だった筆者は、宇宙の中に三角形がポツンと描かれたジャケットの、その摩訶不思議なアルバムに毒づいた。
理由は、あまりにも難解なメロディラインであったからだ。
しかし、2年後にはこのアルバムの持つ完全無欠な中毒性に侵されることになるとは、この時は露ほども思っていなかった。


ロックを嗜む者なら、「狂気」は避けて通ることができない道となる。
それは、周りの人間が勧めてきたり、アルバムの有名性であったり様々な場面で知らざるを得ない状況となるからだ。

知人から「狂気を聴けばすべてがわかる」、そう言われた筆者はHMVに走ったのであった。
アーティスト「P」の列の一角に、そのアルバムはひっそりと佇んでいた。
プログレ系なら、よくあるタイプのデザインだな。ジャケットをみた筆者は心の中で呟いた。

意気揚々と家に帰り、アルバムを再生した筆者は愕然とした。
Moneyなんかはまだしっかりとロックな感じがするので分かるのだが、他曲の良さが一切感じられなかった。

実験的・前衛的な音楽を追求するバンドはプログレとジャンル分けされているが、「狂気」を初めて聴いた筆者は「前衛的過ぎる。大分攻めたメロディだ。」と感じ、体が受け付けなかったのだ。バンドが好き放題演奏しただけの結果ではないか。
そして冒頭に戻り、「外れだな」と毒づいたのであった。

しかしながら今一度言わせて頂くが、今現在「狂気」は大好きなアルバムの一つであり、無人島に1枚アルバムを持っていって良いと言われたら、迷わず「狂気」を選出するはずだ。


何故、難解と思っていたアルバムを敬愛するほどになったのかという部分を含め、次回は筆者が垣間見た「狂気」の魅力・素晴らしさを筆者なりの言葉で綴りたいと思う。








定期的に無性に聴きたくなるアルバムにて