近しい相手との電話で、ケンカのような雰囲気になった。
相手は私に自分の思う通りにふるまってほしいようだった。
私は体調がすぐれず、しかも疲れ切っていて、
言い方がぶっきらぼうだった。
それは本当だったので認め、相手の話にあいづちを打った。
それができる精一杯だった。
しかし、相手は
「嘘でもいいから、明るい声で『うん、そうだね!』と
言ってくれたっていいじゃない!」
「そうじゃないと、気持ちよく電話を終われない!」
と、さらに迫ってきた。
私は、
「気持ちはわかるけど、今はこれしかできない」と言った。
もちろん、相手は納得しなかった。
わたしはうんざりしていた。
昔の自分だったら、このままでは相手が不愉快なままで終わり、
その後思いつめる姿が目に浮かぶので、
相手のために、自分のうんざりを飲み込み、無理をして
「うん、そうだね!」と言ったかもしれない。
しかし私はそこで一歩踏みとどまった。
「ごめん、嘘はやっぱり嘘だから」
結局、相手は納得できないまま、電話を切った。
かたくなだったかもしれない。
不器用な応じ方だったかもしれない。
けれど、かろうじて自尊心を保つことができた。
自分の感情に沿わないことを強いられるのが、
こんなにも腹が立つことなのか・・・改めて思い知った。
そして、正しさを前面に押し出して、
罪悪感を覚えさせ、意に沿わせることの恐ろしさも。
もちろん、相手にそんな意図はない。
そうだとしても、「まぁ別にいいか」と相手の意に沿う経験を重ねると、
相手に合わせているという感覚すら麻痺してしまう。
自分の感情を守るのは自分の権利であり、責任でもある。