白く、大きなベッドの上で、2人の足が絡んでいた。

その爪先でタカのふくらはぎをなぞっていたユージの動きが、不意に止まった。

眠っていたタカの手が、ユージの太腿を撫で、自分へと引き寄せたからだ。

2人の体はぴたりと重なり、ユージは「・・は、ぁ」と甘く熱い息を漏らした。



東京の夜とは違う。人工の光はほぼ見えない夜の空は、見たこともない数の星が空を埋め尽くし、月が海を照らしていた。

月の明かりに沿って、小さな波が寄せる。

部屋の中には繰り返す波の音が、子守唄のように静かに響いていた。


「眠れ、ないのか・・」


少し前まで入っていた場所を指で撫でると、そこはまだ柔らかく、難なくタカの指をくわえようとする。


「ち、が・・、ぁ、・・」


月明かりの中に、ユージの白い喉が浮き上がる。

まだ汗が乾き切っていない、しっとりと濡れた肌からは、甘い香りが漂う。花が蜜の匂いで蜂を集めるように、タカを誘いこもうとしているように思えた。


ーー 甘い罠、か


タカはうなじに顔を埋め、その香りを深く吸い込んだ。
  
この香りは出会った頃から変わらない。例え名前や環境が変わっても・・


「違う。大丈夫。

ただ、さ。眠りたくない、だけ・・」


ユージは肘をつき、タカの上に半身を起こした。


「綺麗だね・・相変わらず・・・」


タカの均整のとれた良い体は、何度見ても飽きることがない。人間離れした動きが出来るのに、首や肩がこれみよがしに太くなることもない。  

どんな鍛え方をしたら、こんな体になるんだろう。

しかも、手術をする迄は、運動らしい運動もしてこなかったっていうのに・・



手術痕が残るタカの胸をそっと撫で、恭しくくちづけた。