朝が来ると、大野の方が先に起きた。
二宮はまだ眠っていた。こんな風に、朝に寝顔を見るのは二度目だった。
何故昨夜はここに来たのか。今またここに居るのか。
大野にはもう分かっていた。二宮のことが好きなのだ。しかも、かなり。
大野は二宮を起こさぬよう、音を消して起き上がった。
まだここにいたい。
だからこそ、二宮が眠っている内に出て行く。
下に散らばった服の中から自分のを見つけ、手早く手足を通すと、もう一度二宮を見た。
穏やかな寝顔に、またキスをしたくなる。一度気付いた甘い感情は、大野の体を一歩動かした。
「振り回して・・悪かったな」
その2分後、大野は二宮の部屋を出た。
この日、二宮が目覚めたのは昼前だった。
「・・・あれ?」
裸で寝ていたことに、首を傾げた。
大野さんが来ていたような・・いや、でも俺は呼んでないし・・
なんかお化けの夢を見たような気はするんだよな・・
昨夜は薬を飲んで寝た。薬で眠る時はやたらと夢を見る。そのせいで記憶が曖昧になっていた。
取り敢えず良く眠れた。大きな欠伸をしながら、窓の外を見た。
珍しくカーテンが半分開いていて、青空が見える。やはり大野が来ていたのか、と二宮は察した。
立ち上がり、窓を開けた。秋めいた風が入ってきて、肌を撫でていくのが気持ちよかった。
あれは夢じゃなかった。
大野は自ら来て、拘束もせずに求めてきた。
全てが甘く、濃密だった。二宮はたまらず甘く息を吐いたが、身体はじわりと濡れた。
服を着ようとして、気付いた。左腕の内側に赤い痕があった。
痕跡を残すことを絶対にしない大野が。信じられなくて、何度も見たり、触ったりして確かめた。
それは確かにキスマークらしく、二宮はまだ夢を見てるのかもしれないと、顔を洗ってみたが、やはりその小さな痕は、腕に咲いていた。
「どんな風の吹き回しだろうね・・」
微笑む二宮は、とても優しい顔をしていた。