そんなバンパイアの彼は歯磨きを終えるとその足で台所へと向かった。
そこには彼お気に入りのメタリックカラーで光を反射するトースターが置かれており、手馴れたようにパンをセットした。
彼はパンを焼く時間を利用してダボダボの服を脱ぐと、
黒色主体のブレザーへ腕を通した。
彼が着替えを終えるとチン、と軽い音を響かせて狐色のパンが飛び出た。
彼がそれを口に銜えた時にピンポーンと共に心地よいアルトの声が部屋に大音量で響いた。
「シロウ!起きてる!?」
その声を聞いた彼はあからさまにため息をついた。
無視してしまおうかと思ったが、声は彼の心を呼んだかのように
未だに部屋に響き続けた。
「もう時間だよ!早くしないと学校に遅刻する!!」
声と共にドアを叩く音も加わったそれは騒音以外の何にでもない。
仕方なく、彼はドアを開けた。
開けたそこには制服をビシッと着こなしたポニーテールの女が立っていた。
「起きているなら返事しなさいよ!ほら学校行くわよ!?」
「遅刻するって、・・・。」
彼は口のマシンガンを撃ち続ける女の背後を覗き込んだ。
そこには、悠然と立ち尽くす学校があった。
「此処から学校まで一分もかからないのに?」
「えぇ、遅刻するわよ。」
「最初の授業まで後二十分もあるのに?」
「えぇ、」
バタン!
平然と言い放つ女を見たくないと彼はドアを力強く閉めた。
しかし閉められた方の女もそれに動じずまたしてもチャイムと声とノックのハーモニーを奏で始めた。
「シ~ロ~ウ~!!」
さも呪の言葉のように女は叫び続けた。
彼女の名前は朝風侑子。彼と同じくハタ中学校に通う中学二年生。
性別 女
特技 目覚ましが無くとも起きられる。
長所 真面目。
短所 生真面目。
といたって普通の女子中学生である。
そして彼らが通うハタ中学校はシロウの住むアパートの目と鼻の先にある。
登校時間がシロウの言ったとおり一分という、なんとも学生にとってははた迷惑の立地条件である。
そのアパートにシロウは一人暮らしをしている。
その話もまた後々語ることになる。