午前二時の澪 | ユークリッド空間の音

午前二時の澪

うつつを指でなぞった先に悪夢があるというなら

夢日記をしたためよう

意識下で作り出した硬く尖ったガラスの破片は

握りつぶした血を舐めてこそ報われる

否、結晶の降り積もる夜こそ

月明かりは正四面体に時の狭間の音を奏でる

窓辺はこんなにも近いというのに

手を伸ばすことすらままならず

檻の深さを知らぬ者は

朝のコーヒーになんの疑いも持たない


溶けた破片から虹を作るすべを

とうに忘れてしまったのだろうか

燃やした夢日記の涙が

おのれを消し去ろうとするならば

悪夢なんて見る意義は

そもそも見つけられやしない


なぞった指が止まる境界線


その寓話をつかさどる語り部が燃え尽きようとも

雫は足元にたゆたい続ける

いっときの幻に吐息を漏らす身を

漣はくすぐりやまない