被災された方々には、少し辛い内容ですが、新作を書きました
今回で第三回目の天国からのラヴコール
今回は、震災のお話です
賛否両論あるかと思いますが、率直な意見、宜しくお願いします
CASE:3
隼人
テレビを付けると、連日連夜、東日本の震災のニュースが流れている
この街からも、何人か救援に行ったようだ
逆に、この街に避難してきた人もいるようだ
今回ばかりは、お客様が来ない事を祈る…
そんな期待を裏切る様に、自動扉が開く
「いらっしゃいませ。今日はどういったご用件で??」
「震災で亡くなった、友達に逢いたい」
今回のお客様は、若い女性だった
両手には、何故かサッカーボールと手紙の束を持っていた
「では、こちらの書類を記入して下さい」
「はい」
彼等は注意事項に目を通さず、書類を書き進めた
「発信者は…坂本夏希、受信者は三木隼人…っと」
「あの…」
「はい??」
受信者リストを検索しているAHPSから手を離した時、夏希がサッカーボールを差し出した
「これ、向こうに送って下さい」
「かしこまりました。お預かり致します」
サッカーボールを受け取ると、AHPSの上に置いた
「では、再度忠告します。当エンジェルコールは、人生で一度しか使えません。この御方で宜しいですか??」
「大丈夫です」
「いました、該当者は一名。この方で間違いありませんか??」
「間違いありません」
「では、転送致します。中に入って、三分後に受話器をお取り下さい」
夏希が中に入った時、私はいつも通り、AHPSの転送ボタンを押そうとした
「…」
押して良いのだろうか…
これを押してしまえば、彼女の希望は無くなってしまう…
中々押せない…
心音が、身体中に響き渡る…
「…」
目を閉じて、ボタンを押した
サッカーボールが向こうに転送され“三木隼人”と言う膨大なデータと記憶がAHPSに転送されてきた
「もしもし??」
「お~、夏希か。どした~!?」
「どした~じゃないよ!!あんた死んだんだよ!?」
「あ~、地震の後来た津波に飲み込まれてな」
「…昨日、沢山の遺体が見付かったの」
「そうか。ガキ達は無事か??」
「ガキ??」
「一緒にサッカーしてたんだ」
夏希は、手にした手紙を握り締めた
「ぶ…無事よ…」
「良かった…」
その言葉を聞いた途端、夏希の目に涙が溢れた
「居なくなったの…あんただけよ??」
「ごめん、夏希」
「早く帰って来なさいよ…バカ…」
「すまん…」
「ほんっとに、バカ!!」
「すまん…」
隼人は“すまん”を繰り返すばかりだった
AHPSに転送されてきた、彼のデータ
「サッカーの記憶ばかり…サッカー好きなんですね」
そんな中、所々に“夏希”が出て来る
「サッカー部のマネージャー…」
幾つもの記憶をさかのぼると、彼等二人の記憶が出て来た
「小さい時から一緒に居たんですね…」
頬杖を付きながら、AHPSのカーソルを送る
夏希に怒られている記憶
初めて試合でゴールを決めた記憶
夏希と一緒にご飯を食べる記憶
マネージャーとしての夏希と一緒にトレーニングする記憶
夏希を泣かせた記憶
サッカーの大会に優勝した記憶
カーソルを送る度に、夏希とサッカーの記憶ばかり流れていく…
「そうだ、サッカーボール、届いた??」
「おぅ、こっちでサッカー出来るぜ!!ありがとな!!」
「それと、あんたの言ってる“ガキ達”から手紙が届いたよ」
「読んでくれ」
「言われなくても読むわよ!!」
手紙を束ねているゴムを取り、三枚の手紙の封を開けた
「隼人さんへ…いつもサッカー教えてくれてありがとう。震災が落ち着いたら、またサッカー教えて下さい」
「うん」
「隼人さんへ…隼人さんのお陰で、初めての試合でゴールを決められました。震災が落ち着いたら、また練習見てください」
「うん」
「隼人さんへ…あの時、僕達を高台へ連れていってくれてありがとう…また…サッカー教えて…下さい」
「泣くな、夏希」
「みんな…こんなにも、あんたの事心配してんのよ!?」
「俺は…夏希が無事ならそれでいい」
「バカ!!」
「!!」
「あたしはね…あんたが居ないと、何にも出来ないの!!」
「ばぁ~か。おまえはきー強いから、何処でもやってけるさ」
「強気なの、あんたの前だけなの、気が付かなかった??」
「…」
「サッカー部のマネージャーになったのも、あんたの事見てたいからだったのよ??」
「ありがとう、夏希」
隼人の最終データが転送されてきた
死因は、溺死
死亡した当時の年齢は、18歳
死ぬには若過ぎる年齢だ
ボランティアで孤児にサッカーを教えたりする、心優しい少年だった様だ
人は言う
優しい人程、早く迎えが来る…と
「あたし、サッカー嫌い」
「おいおい、止めてくれよ。ガキ達にサッカー教えてやってくれ」
「サッカーなんてだいっ嫌い!!」
「夏希っ!!」
「だって…あんたサッカーしかしなかった…あたしの事、ちっとも見てくれなかった!!」
「そう思うなら、お前の着てるジャケットの内ポケット、見てみろ」
「何で着てるって分かるのよ」
「いつもの事だ。どうせ人のジャケット着て、返さんのだろ??」
「う、うるさいわね…」
そう言いつつも、内ポケットを探る
「あ、何かあった」
「…」
「これっ…」
内ポケットから出て来たのは、ボロボロになった、夏希の写真だった
「俺も、いつもお前を思ってた。試合行く時、家で一人で居る時、最後に見たのは、津波に飲み込まれる直後だ」
「…」
「だから夏希、もう泣くな」
「このっ、ボンクラっ!!」
「!!」
「何で早く言わないの!!」
「すまん…」
「もおっ…昔っから弱気何だから…」
「すまん…」
「ふふっ…あんたと話してる時が、一番楽しい」
「俺もだ」
「好きよ…隼人の事…」
「分かってるよ…」
「今度逢った時、そんなフヌケだったら、承知しないからね!!」
「あぁ」
「何か言う事無いの??」
「好きだ、夏希」
「それ…聞きたかった…」
「マネージャーで居てくれてありがとう」
「感謝しなさいよね」
「お前にプレゼントがあるから、送っておく」
「…ありがとう」
「じゃあな」
「隼人」
「どした??」
「あ…愛してる…」
「ありがとう…夏希」
「隼人!?隼人!!」
二人の会話が終わった
それと同時に、隼人から何か送られてきた
「ん!?」
いきなり電源が落ち、AHPSが動かない
「何が起こった!!」
キーボードやカーソルを動かすが、何の反応も無い中、ロケットペンダントとぬいぐるみとフロッピーディスクが勝手に出て来た
「な…何が起こってるんだ!!」
そんな中、暗い画面に文字が打ち出された
LOVE_NATUKI_
「有り得ない…こんな事…」
「ありがとうございました」
部屋から出て来た夏希は、何食わぬ顔で出て来た
「夏希さん、これ」
「何ですか??」
夏希に画面を見せる
「あ…」
夏希の目から、大粒の涙がこぼれた
「あ!!続きが!!」
再び画面に文字が打ち出された
GOODBAY_NATUKI_
「行かないで!!隼人っ!!」
夏希そう言った後、AHPSの電源が回復した
「うわぁぁぁぁぁ!!隼人~~~!!」
「…」
しばらく夏希が泣いた後、私は彼女にロケットペンダントを付けた
「これ…」
「隼人さんの写真です。大事にして下さい」
「隼人…」
「次は、これ。お休みの時に、枕の下に入れて下さい。良い夢が見られますよ」
「隼人の匂いがする…」
胸いっぱいに、ぬいぐるみの匂いを吸い込む
「次は、これ。中身は内緒です」
「いっぱいくれますね」
一呼吸置いて、少し微笑むと、私は最後のプレゼントを手に取った
「これ、隼人さんから送られてきた物です」
隼人から送られてきたのは、小さな箱だった
「開けてみて下さい」
夏希は箱を開けた
「綺麗…」
箱の中には、銀の指輪とメッセージが入っていた
「何、これ」
メッセージにはこう書かれていた
お誕生日おめでとう
好きだ
「そっか、あの日、あたし誕生日だったんだ」
「優しいお方ですね、隼人さん」
「大好きでした…優しい隼人の事…」
写真と手紙と指輪を抱き締め、彼との思い出を振り返る…
「あ、そうだ。料金は…」
「今回はAHPSの不具合もありましたので、結構です」
「でも…」
「隼人さんとの思い出を見させて頂いた…これを料金に致しましょう」
彼女のポケットに、お金が無い事位、私には分かる
私は、下手な言い掛かりを付けた
「ありがとうございました」
「こちらこそ。でわ、夏希さん、良い旅を」
夏希は、思い出を抱き締め、街の中に消えて行った
数ヶ月後…
彼女のマネージャーだった高校が、全国優勝したニュースをニュースで見た