【最弱の証明】

 

初めての練習試合。

 

結果は——77対0。

 

うん、なんとも縁起が良い数字だ。ただトンデモナイ大敗で、一度もトライゾーンに入れなかったワケだがね。

 

ボールが手につかず落とすやつ。あっさり倒され、抜かれていくやつ。全く追いつけずにトライを奪われ、前も見ず仲間に突進して反則。とにかくひどい有様だった。

 

スコアボードだけが無情に数字を重ね、しまいには互いに責任を押し付け合う始末。

 

『なんであそこで止めねぇんだよ!』

『クソみたいな反則取られてたお前が言うな!』

『おいやめろって!』『ヤバい、とめろとめろ!!』

 

——最弱の幕開けにふさわしい試合だった。

 

「いや、まぁ酷いね」

練習試合後のミーティングで、誰かが口を開いた。

 

「走れないとか、力負けするとかまだいい。でもまずルールを理解するところからだ」

 

ごもっともだ。俺だってラグビーのルールを半分も分かっちゃいない。15人もいるんだから、1人ぐらい隠れててもバレないだろう——そんな考えで反則が少ないだけ。そもそもボールに触ってないんだからね!

 

「仲間に当たったのは……ごめん」

「うん、まず前を見て走ろう」

 

——日常生活でも前を見て走るべきだろ。……まぁここは俺が和ませよう。

『ボールを前に落としちゃダメなんだよね?』

 

『…………』

 

予想外に、みんなが静まり返った。

 

『……お前さ、今まで何して来たんだ?』

『多分ラグビー? え? なに?』

 

誰もが無言になり、それぞれがどこかを死んだ目で見つめていた。