12時丁度
列車は定刻通り鶴見駅に向けて出発した。
海芝浦駅 から乗車した乗客は、東芝の社員と思われる人が若干名と、海芝浦駅を観光しに来て折り返す一般人が10名ほど。
海芝浦駅に来るときに通ってきたカーブを、今度は左に大きく曲がって行く。
カーブが終わったと思ったら、シーサスクロッシング分岐器にて、複線となる左側の線路に移動させられて、駅のホームに停車した。
この駅で下車してみることにする。
「新芝浦(しんしばうら)駅」
潮風のせいなのか?駅名標の塗装がボロボロに剥げ落ちているのが印象的だ。
相対式ホーム2面2線を有し、ホーム間の移動は構内踏切を使用する。
この駅で下車した人間は私一人だけであった。
この駅は、ホームに番線が割り振られていないようだ。
浅野・鶴見方面乗り場ホーム側に駅舎と上屋が設けられている。
ここも浅野駅 と同じく、窓口があったような形跡がある。以前は有人駅だったのであろう。
そして現在は、簡易Suica改札機と使用済み切符の回収箱が置かれてある。
まことに小さい駅舎だが、木造でなかなか味わいのある建屋だ。
鶴見方面ホームには小さいながらベンチも設置されている。
しかし海芝浦方面ホームは、小さな上屋しかなくベンチも無い。
確かに、この駅から海芝浦行き列車に乗る人など、皆無に近いであろう。
よって海芝浦方面ホームは、ほぼ下車専用ホーム状態になっているのだ。
しかしそのホームから、海芝浦駅と同じくホームの真下まで運河が迫っているのが見られるのである。
この駅の目の前には東芝京浜事業所の入り口があり、東芝へ来訪する者はこの駅で下車することになる。
前回の記事 で、海芝浦駅の敷地は東芝の私有地だという事を記載した。
そこからさらに付け加えると、この新芝浦駅と海芝浦駅の区間も、東芝の私有地となっている。
海芝浦駅に行く場合、この駅を過ぎればそこからもう事業所の構内になるのだ。
最後に駅名の由来だが、「芝浦製作所」(東芝の前身)の最寄駅である為。
しかし当時、既に「芝浦駅」が存在した為(現在は廃止)、冠に「新」が添えられた、との事である。
平日の朝夕にこの駅を利用する人は相当いると思われるが、私が訪れた日は日曜の正午近く。
この駅を訪れてから離れるまでの間、駅構内で人に会う事は無かった。
さて、次の駅に向けて移動しよう。
しかし、次の鶴見方面の列車は約2時間待たないとやってこない。
そんなに待っていられるわけがない。
ここで、阿房列車の旅で初めての移動手段を使用する。
それは「徒歩」である。
群馬阿房列車の旅 で、JRと上電の駅間を徒歩で移動したということはある。
しかし、同じ路線の違う駅に徒歩で移動するのは今回初めてとなる。
今は雨も一時小休憩状態である為、早速浅野駅に向けて歩き出す。
左側に巨大な工場、右側に線路と運河を見ながら進む。
天気が良ければ、もっと気持ちの良いウォーキングになるだろうに、少々残念だ。
歩いている途中、漁船だか荷船が運河を行きかう様子が見られた。
新芝浦駅から10分程で浅野駅に到着してしまった。
先ほど浅野駅で見た猫は、既にいなかった。
程なくして、2番線に鶴見行きの列車が到着した。
私はその列車に乗り込み、次に訪れる駅に向かう。
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