JR鶴見線は、横浜市と川崎市との境目にある『京浜工業地帯』を網羅する形で線路が張り巡らされている。
鶴見線の主な利用者は、沿線に存在する工場へ通勤する従業員達である。
もちろん工場地帯を走る路線という事で、貨物列車の扱いも盛んである。
そんな工業地帯を走る路線なんて、いかにも近代的な印象の路線なのではないか?
と思われるかもしれない。
しかし既に下車した国道駅 が、鶴見線の最初の駅だと分かれば如何なものか?
国道駅周辺はまだ工業地帯ではないものの、近代都市の風景への期待は自ずと薄まってゆくことだろう。
国道駅を出発した列車は、鉄橋にて鶴見川を越えた直後に徐々に勾配を下って行き、地上に着陸したとほぼ同時に隣の駅に停車する。
この駅、そしてさらに隣の駅をやり過ごし、国道から数えて3つ目の駅で下車してみた。
「浅野(あさの)駅」
島式ホーム1面2線と相対式ホーム2面2線を併せ持つ、変則的な駅だ。
この駅は、支線との分岐点となっているがために、このような構造になっている。
本線のホームが島式ホームで1、2番線。
支線のホームが相対式ホームで3、4番線が割り当てられている。
駅には、既に鉄道ファンと思われる先客がおり、せわしなく撮影を行っていた。
中には、小~中学校生と思われる少年グループもいた。
駅の入り口には窓口があったような形跡があり、駅舎は2階建ての構造になっていることから、昔は有人駅だったことが伺える。
現在の改札は、簡易Suica改札機と使用済み切符の回収箱が無造作に設置されているだけだ。
ホームからは、駅に隣接するコンビナートの姿を臨むことができる。
このような風景を見れば、工業地帯を走る路線であることは理解できよう。
しかし、赤錆びたコンビナートに近代的印象を求めるのは酷である。
国道駅といい浅野駅といい、どことなく昭和の匂いが漂ってくる。
これが鶴見線だ。
そしてこの駅の最大の特徴は、3番線ホームだ。
ホームに設置されている木造の上屋もさることながら、注目すべきはホームの形だ。
本線と支線に沿ってホームが扇状に広がっており、無駄に広大なホームになっているのである。
そんな広大なホームに、野良猫の姿が数匹見えた。
随分人に慣れた感じの猫たちだ。
この駅に訪れる人たちに、かわいがってもらっているのだろう。
最後に駅名の由来だが、鶴見臨港鉄道(鶴見線の前身)の設立者で、浅野財閥の創設者でもある浅野総一郎にちなんでつけられた、との事である。
次は、3番線から発車する列車に乗ってみた。
支線を走る列車を利用して、一つ目の終着駅まで行ってみようと思う。

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