ずっと
ずっと

前のこと


私の泣く場所は
猫の部屋

まだ
りゅうは
いなかったかな


えみちゃんは
そんな私の膝に乗り

顔を両手で挟み

ペロペロと
涙をなめてくれた


その横で
小さな娘は



小さな虫を見つけて



あっ
泣き虫や


やっつけたげる


小さな手で

泣き虫を
たたいた



小さな虫にも
命がある


同じ命なのに

形が違えば
軽んじられて


儚く消え行く
小さな命



ごめんな


虫さんに謝ったで


おかあさん

泣き虫やっつけたで



もう大丈夫や




泣かんとき
僕が幸せにしたげるさかい



10才になった息子は
そう言った



子供の前で
涙を見せることが

良いのか悪いのか
私にはわからない


けれど

おとなになったふたりが

私にそっと
告げた



おかあさんの涙を
見てきたから


人には優しく

人を泣かすようなことは
しないでおこうと


そう思ってこれた



ずっと
ずっと
前のこと



ふたりは覚えているだろうか



平凡な日常が
一番
幸せなことを


私の涙が

ふたりに


伝えた







べぇとえみ

うちの保護猫1号2号


娘が幼稚園で作ったもの


まだ
捨てられなくて


これからも
きっと
捨てられなくて


この二匹に
胸を張れる生き方を
しようと



そう思った昼下がり



私は
じゅうぶんなことを
してやれただろうか


こんな私を
二匹は


空の上で
笑ってるんだろうな