娘が呟いた


愛護センター…な… 






友達から相談されてな…








聞けば

友達の知り合いの男性が
結婚をする

相手の女性が
動物アレルギーだとかで

10年飼ってきた猫5匹

犬3頭を手放すという


1頭はレトリバー


友達は
なんとか引き取り手を
捜す事はできないかと

娘に相談を持ち掛けてきた




娘は職業柄
保護団体さんや
個人で保護活動をされている方も
知っている

けれど
時間がない

すぐには
みんな手一杯

娘は
当事者の男性とも
直接話をした

なんとか力にはなりたいが
時間が欲しい

そう言う娘を遮り

すぐに無理なら

愛護センターへの引き渡しを
考えている
言ったとか



10年やで…

そこまで一緒にいて
そんな簡単に
愛護センターへ渡せる?

愛護センターへ渡した
その後の現実も伝えた

ボランティアさんに
引き出してもらえる子
譲渡会で
里親さんが見つかる子は
一握りにしか過ぎない

考え直して欲しいと
伝えた





けれど
その人は
愛護センターへの
引き渡しを決めたんやて




私は何もできひんかった

あの子たちは
信じていた飼い主に
裏切られてしまった




生きられる命を
奪うんか…



私は
何もしてやれんかった…




治療しても助からん命もある
生まれてすぐ死ぬ子もいる

そんなとき
私は
しゃあない
しゃあないと
自分に言い聞かせて
越えてきたけど


今回は
許せへんし

割りきれへん


しゃあないと
言われへん






娘の目は
潤んでいた


今にも
大粒の涙が溢れそうな目




私は
何も言わず

娘の目を見て
頷いた


泣きなさいと
泣いてもかまへんと

言いたいのを
おさえ



娘は



泣いたら
潰れるんだろう



泣いたら



駄目に
なってしまいそうなくらい



つらいんだろう



娘の目を潤ませた現実


今まで一緒にいた子さえも
殺処分をわかっていて
手放す飼い主がいる現実


そんな子たちを
救おうと
奔走する人たちの
限界と苦悶



そして
その現実に

心を痛める娘


生きていくって
そんな現実の
繰り返し

でも
そのなかに

人の優しさを
感じる現実の方が
たくさんあることを



私は
知っている



きっと
娘も

知っているはず


娘の目を潤ませた現実は


とても
つらく

やるせない現実だった



おねえしゃん


大丈夫かにゃ