涙
涙
走ることを
宿命に生まれてきた馬
競走馬の宿命を
背負わせたのは
人間
けれど
馬は
厩舎で
馬場からの蹄の音を聞き
繋がれたまま
脚を駆く
怪我をしていても
心が走る
そんな姿を見て涙したと
そう言った調教師さんがいた
10才の女の子は
蹄鉄を打つのを
教えてもらうくらい
馬が好きだった
馬に乗るより
世話をする方が好きだと
藁を運び
馬に寄り添い
いつか
馬とともに生きたいと
言った
誰もが信じなかった
キングヘイローの
初のG1制覇を
パドックを見て
この子は
今日は勝つと
言った女の子
その日から
1年
馬の命の現実を知らされ
幼すぎた女の子は
受け入れることができず
馬との関係から
離れた
大人になった女の子は
このニュースを
どんな思いで聞いただろうか
しかたがない
そう
割りきれるように
なったのだろうか
大人になった女の子は
馬ではないが
やはり
動物と関わりながら
生きている
日常に生と死がある職場で
懸命に生きている
きっと
ディープインパクトの話は
しないだろう
関わった人達が
どれほどの
苦渋の中で決断したことか
痛いほど
わかるようになったから
大切な私の娘
小さな頃の
可愛い思い出
ディープインパクト
安らかに