夢を見た

もう20年近く
会うことのない人


一時は
「お母さん」と
呼んだ人


結婚して住んでいた家
月参りのお坊さん

勝手に入ってきていた義母


あれほど嫌で
死守していた家への出入り


何事もなかったかのように

やり過ごす私がいた



義母はもう幾つになっただろう

夢の中では
あの日のままの姿だったけれど



義母からすれば
私は
いい嫁ではなかっただろう


思い通りにいかず

お互い
意思の疎通もできず


受け入れる事すら
できなかった



でもね
一才になったばかりの子に

レディボーデンの
おっきな容器の
アイスクリームを持たせ

全部食べさせたり


みたらしだんごを
好きなだけ
食べさせたり


はじめての
誕生日

孫の誕生日会を開いてもらうと

なぜか
私と子を残して
出かけたり




誕生日だから
残業はできないと

プレゼントを買って帰ると
会社を出て


夜中まで帰って来なかった

父親


いったい
この家は
どうなっているのか

この人たちは
何を思っているのか

わからないまま


そこに身を置いていると

まるで
私の方がおかしいように
感じた毎日




けれど
いい嫁ではなかったという
一抹の後悔と懺悔は

拭いもできず


こころの隅に
押しやり

過ごしてきた



夢の中の義母


まどろみの中で
胸を締め付けられる事もなく


得体の知れない不安に
襲われる事もなく

ただただ

相容れる事が
できなかっただけなんだと
思った

 


「もう…いいよね…お母さん」


あなたを
「お母さん」と

呼ぶのは



きっと
今日が最後




「寂しい人だったね」
と思うのも

今日が最後




そして

一言



私が楽になるために



「ありがとう」


空色の猫になった

ななが
ささやいた




もう
いいよ

もう
忘れていいよ